10月の芝生の手入れ 基本作業と注意点

日本芝(高麗系)の10月の手入れ

10月はシーズン納めを準備する重要な時期

10月の姫高麗芝の様子

10月は高麗芝がシーズン納めをするための準備の月です。芝生の成長が衰えてくると興味が薄れがちになると思いますが、緑を楽しませてくれた芝生がきちんと休眠期を迎えられるよう、ありがとうの気持ちを込めて手入れをしてください。また、秋の手入れは来年の立ち上がりにも大きく影響しますので、施肥や病虫害対策をしっかりやっておきましょう。


10月の芝刈りの頻度

気温低下や日照が短くなり芝生の成長が衰えてきますので、週1回ペースだった芝刈りが10日~2週間に1回程度でも問題ないぐらいになります。成長具合は、その年の気候や施肥、散水の頻度にも影響されますので、様子を見ながら芝刈りのペースを調整してください。10月下旬から11月初旬に今シーズン最後の芝刈り「刈り止め」をします。少し長めにしておくと、冬期の寒さや霜から根を保護する効果が高くなります。今シーズンも緑を楽しませてくれた芝生に感謝の意を込めて刈っておきたいですね。いつ刈り止めするかは最初から決めておく必要は無く、結果的に前回の芝刈りが最後だったという感じでも大丈夫です。難しく考えずに気楽にやりましょう。

芝刈りについて

10月の芝生の雑草

秋は実りの季節。雑草も次の世代を残すために穂をつけているものがありますから、種を落とされる前に早めに抜き取って起きましょう。カタバミなど手作業では抜き取りが難しいものは、除草剤で駆除することをお勧めします。気温が低くなってきますので、除草剤の薬害のリスクも低くなります。除草剤にはそれぞれ効く雑草と効かない雑草がありますから、どの雑草に効くのか、どのような効き方をするのかをよく理解して目的に合ったものを選んでください。

芝生用除草剤について

10月の芝生の水やり

気温もだいぶ下がってきますので、様子を見ながら頻度を落としてください。どんどん生育させる時期と違い、芝生を落ち着かせる時期ですので、水やりもそれなりのペースになります。雨が適度に降る場合は、ほとんど散水は必要なくなるでしょう。

秋は病害リスクも高くなるため、常に表層がジメジメしている状態にするのも良くありません。表層はジメジメせずに根の部分には水分があるというのが理想です。水やりは芝生の手入れの中でも最も奥が深い作業ですから、状況を見ながら散水頻度を調整してください。

芝生の水やり・散水

10月の芝生の施肥

使用している芝生用肥料の用量の範囲内で肥料を与えます。肥料には、毎月与えるもの、隔月で与えるもの、月に2~3回与えるものなど、さまざまなタイプがあります。説明書をよく読んで、用量を守ってください。粒状肥料を散布した後は、必ず水をたっぷりまいておいてください。水やりをしないと芝生が肥料焼けをする可能性があります。

この時期の施肥は、秋の緑化期間の延長と、来春の立ち上がりに影響します。芝生の勢いが衰えるに従って興味も薄れてくるじきですが、来年のためには非常に重要な時期でもありますので、最後までしっかりと栄養を与えてください。芝生はこの時期に蓄えた栄養を来春の萌芽に使います。

芝生の肥料について

10月の芝生の病気

夏の間猛威をふるったカーブラリア葉枯病(ヘルミントスポリウム葉枯病)は、気温低下とともに徐々に落ち着いてきます。ただし、雨や夜露が多かったり、無風の日が多い場合は、病状が悪化することがありますので油断しないでください。殺菌剤で対応する場合は、ロブラール水和剤、ラリー水和剤、芝美人フロアブル、モノクタジンフロアブル、タフシーバフロアブル、グラステン水和剤などが有効です。この病害に関しては、今のところ無農薬で発症を抑制するのは困難であるのが現状です。無農薬で対処する場合は、発症は容認し、時期が過ぎれば自然治癒により修復させるというレベルです。

関連記事:カーブラリア葉枯病の症状と対策

気温低下に伴いラージパッチが発生しやすい季節になります。葉枯病ほどは怖くない病気ですが、定番的に発生する病害ですから発生確率は高いでしょう。この病害の特徴としては、雨や多湿になるとパッチ周辺部が赤やオレンジ色に変色することです。比較的判別しやすい病害です。無農薬で対処する場合はスーパーグリーンフードによる微生物の投入、スーパー・ポリ・スピリットでカリを吸収させることで生理移行を促進することなどが有効です。殺菌剤を使用する場合は、バリダシン液剤、ロブラール水和剤、芝美人フロアブル、モノクタジンフロアブル、タフシーバフロアブルなどが有効です。農薬を使用する場合は、使用上の注意をよく読んだ上で正しく使用してください。

関連記事:ラージパッチの症状と対策

また、春に発症する春はげ症やゾイシアンディクラインといった病気は秋に罹患します。ですので、この時期に殺菌剤で対処しておかないと、春に発症してからの対処は効果があまり期待できません。毎年春に芝が生え揃わない、パッチ状に生えてこないなどの症状がある場合は、10月から11月にかけて殺菌剤を散布しておきましょう。

対応する殺菌剤は、芝美人フロアブル、モノクタジンフロアブル、タフシーバフロアブルなどがあります。

芝生の病害対策・予防

10月の芝生の害虫

成育が衰える時期に根を食い荒らされると、来年の立ち上がり時期に影響することがあります。密度の低下や部分的に冬枯れのように枯れるなど、害虫の食害と思われる症状が発生したら早めに殺虫剤(スミチオン)で対処しておきましょう。害虫によって潜んでいる場所(深さ)が異なりますので、一番深いところにいるコガネムシの幼虫を狙って散布しておけば、浅いところにいる害虫も一網打尽にできます。スミチオンの場合、1000倍希釈液を3リットル/m2になります。説明書をよく読んで使用してください。

予防的な対処をする場合は、オルトランなどの浸透性殺虫剤を使用します。浸透性殺虫剤は、芝生に薬剤が浸透することによって、それを食べた害虫が駆除されます。食毒性ですから害虫に直接かかっても駆除できないことと、即効性ではないことにご注意ください。

芝生の害虫対策

着色剤で冬も緑に

冬も緑を維持する方法のひとつに、着色剤による施工があります。着色剤は芝生の葉が退色する前に塗布する方がより効果が高くなります。10月下旬ぐらいから月1回ペースぐらいで着色をすると、冬も緑色の芝生が楽しめます。着色剤を塗布する場合は、きめの細かいミストを出せる噴霧器を使用しましょう。粗いミストは着色効率が悪いため、散布量ばかり増えて着色が不十分になることがあります。細かいミストによって葉にしっかり付着させることが秘訣です。

関連ページ:芝生用着色剤

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寒地型西洋芝の10月の手入れ

10月は寒地型西洋芝の再生が進む

10月のケンタッキーブルーグラスの様子

9月に夏の傷みのピークとなった寒地型西洋芝も、気温低下とともに成長が旺盛になり再生が促されます。春ほどではありませんが、寒地型西洋芝が旺盛に成長し美しくなる時期です。しっかりと成長を促して冬の寒さに耐えられるよう体力をつけさせてください。


10月の芝刈り

成長具合を見ながら芝刈りのペースを上げてください。特に肥料散布後に秋雨が続いたりしますと、徒長も加わって急に伸びが早くなることがあります。天気予報を見ながら早め早めに芝刈りをしておきましょう。


10月の水やり

週2~3回を目安に散水します。秋雨前線が活発になるようでしたら散水はほぼ不要になります。多湿になると病害発生リスクが高まりますから、多すぎにならないよう適度に調整してください。


10月の肥料のやり方

粒状肥料(固形肥料)を説明書通りに与えます。肥料によって散布時期やタイミングが異なりますので、説明書の通りに散布してください。応用的な使い方ができる方は様子を見ながらタイミングや量を調整してください。

傷んだ芝生の再生に最もお勧めしているのが土壌改良剤のスーパーグリーンフードです。特に傷んでいる場所には平米100~200g程度を入れ、薄く目土をかぶせておくと再生が促されます(目土は必ずしも必要ではありません)。肥料と併用することで相乗効果が期待できます。また、光合成を促進する成分の入った液体肥料を併用することも有効です。(ケイ酸、カルシウム、鉄、苦土、カリ、ミネラル)。


10月の病気 予防と対策

秋は病原菌が活発になるシーズンでもあります。夜露が多くなったり天候不良が続いたりすると発症リスクも高まりますので、天候や芝生の様子を見ながら怪しい気配があったら早めに殺菌剤や健全性を向上する資材で対処しておきましょう。

■発生の可能性がある病害
いもち病、さび病、ダラースポット病、立ち枯れ病、ドライスポット(*)、ピシウム病、フェアリーリング病、ヘルミントスポリウム葉枯病、炭疽病、細菌病

*ドライスポットは砂をメインにした床土で発生しやすい症状です。


10月の害虫 予防と対策

11月ごろまでは常に何らかの害虫が存在している可能性があることを前提に対処してください。発生数が多い場合は被害が大きくなりやすく、芝生の再生も阻害されますので、早めに対処しておきましょう。部分的に枯れる、密度が低下する、地上部分がポロポロ取れるなど、害虫の食害と思われる症状が発生したら即効性のあるスミチオンなどを散布して駆除しておきましょう。予防的な薬剤散布をする場合は、食毒性のオルトランなどを使用します。食毒性の殺虫剤は、薬剤が芝生に浸透することによってそれを食べた害虫が殺虫されます。食毒性の殺虫剤は薬が触れて殺虫するものではありませんので、薬剤の特徴を理解して使用してください。


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