5月の芝生の手入れ 基本作業と注意点

日本芝(高麗系)の5月の手入れ

5月は芝生がほぼ全面的に生えそろう

5月の姫高麗芝の様子

5月になるとほぼ全面的に新芽が生えそろい、芝生のグリーンを目で楽しめる時期に入ってきます。と同時に、こまめな芝刈りが欠かせない時期になります。芝生の成長はムラができやすいですが、伸びている所を基準にして芝刈りをすれば軸刈りの心配が少なくなります。とくに端の方はほふく茎が密集しやすく、先行して成長することがありますので早めに刈っておきましょう。

芝生は刈り取られることによって目数を増やして密度が高まる性質があります。こまめな芝刈りこそが絨毯のような芝生に仕上げる秘訣です。

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芝張り・部分張替え

目地張り

芝張りや部分的な張替え作業に適した時期です。5月は気温が上がりますので、芝張り後の水切れには注意してください。

張替えをする場合は、必ず古い芝をはがしてから行いましょう。以前ご相談いただいた中に、古い芝の上に土をかぶせて芝張りをした結果、キノコが大繁殖したということがありました。キノコは有機物(枯れた葉や根)をエサとして増殖しますので、土壌中に古い芝があるとキノコの温床になることがあります。

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芝生の雑草対策

5月になると雑草の成長も旺盛になり、いろいろな種類の雑草が生えてきます。カタバミやヒメクグ、スギナなどの地下茎で繁殖するタイプの雑草は、生え始めると手作業での抜き取りでは対応しきれなくなります。地上部を取っても、根が残っているとそこから増えます。こういった雑草を駆除するには、除草剤の散布がお勧めです。

除草剤には、葉や茎から吸収させて根まで枯らす「茎葉処理」のタイプと、土壌に残留して生えてこなくする「土壌処理」の2種類があります。それぞれ特徴を生かして散布してください。6月以降は日中の気温が高くなって除草剤の散布には適さないシーズンになりますし、雑草が大きくなってしまうと効かないこともありますので、散布するなら早めの方が良いでしょう。

■除草剤選びのチェックポイント

除草剤には「茎葉処理」と「土壌処理」の2タイプがあります。「茎葉処理」は茎や葉から薬を吸収させて枯らすタイプで、生えている雑草を駆除します。大きくなってしまった雑草には効きにくいことがありますので、発芽を確認したら早いうちの処理が望ましいです。「土壌処理」は発芽を抑制する効果があります。土壌に浸透した薬剤が数ヶ月に渡って雑草の発芽を抑制しますので、生えてこない環境を維持できます。

一般家庭の広さの芝庭では、イネ科から広葉雑草まで幅広い適用があるシバキープII粒剤などが便利です。シバキープII粒剤は、年3回程度の定期散布をして大半の雑草を防除し、それでも枯れないものをシバキープエース液剤やシバキープシャワーなどのスポット散布で対処するのが理想的です。(シバキープシリーズには様々な商品がありますので、しっかり説明書を読んで目的に合ったものを選んでください)

シバゲンDFのようなプロ向けの除草剤も幅広い雑草に非常に効果がありますが、平米あたりの散布量が0.02g程度と非常に微量のため、一般家庭の芝庭ですと量的に持て余してしまう一面があります(期限までに使い切れない)。こういった除草剤は200~300平米以上の面積がある芝生にお勧めです。


芝刈り

芝生の成長が加速しますので、週1回ペースで芝刈りをしてください。芝生は芝刈りで縮小した葉の面積を補うため、新しい葉を出そうとします。密度があってきれいな芝生に仕上げるには、こまめな芝刈りが欠かせません。

関連ページ:芝刈りについて

目土入れ

ほふく茎が露出しているようなところや踏圧などでへこんでいる場所、密度の低い場所があったら、目土をかぶせて保護したりデコボコを修正してやりましょう。エアレーションを1~2か月に1回くらいのペースで行うと、芝生の活性化につながり密な芝生になります。

関連記事:芝生の目土入れについて

芝生の水やり

最高気温が25℃付近になってくると、雨の降り方次第では水不足の症状が出ることがあります。降水量が少ない地域や降雨が少ない天候が続いた場合は特に注意してください。水不足は光合成を停滞させますから、成長が阻害されたり病虫害リスクが高まるなどの不具合が生じます。天候や葉の様子を見ながら、適宜散水してください。日中芝生の様子を見ることができない場合は、帰宅時に芝生を踏んでみてカサカサしていないかをチェックしてください。

関連ページ:芝生の水やり

芝生の施肥

芝生の成長が旺盛になってきますので適切に肥料を与えてください。使用する肥料によって施用量が異なりますので、説明書に従って散布してください。一般的に「肥料」というと「チッソ・リン酸・カリ」の三大要素を指すことが多いですが、植物には多様な栄養素が必要ですので、それらが欠乏することの無いよう、有機資材や微量要素肥料などを組み合わせて散布してください。

関連ページ:芝生の肥料について

芝生の病気

5月になると日本芝の定番的病気のラージパッチ(葉腐病)の勢いが増すことがあります。雨や曇り、多湿の天候が続くことが予想される場合は芝生の変化に注意してください。雨や多湿の日に赤く枯れた葉が出てくるとラージパッチの初期症状です。やがてパッチ状になり、雨のたびにパッチ周辺部が赤やオレンジ色に変色します。ラージパッチの疑いがある場合は、早めに処置をしておきましょう。関連記事:ラージパッチの症状と対策


4月に引き続き春はげ症や立枯病(ゾイシアディクライン)などの芽出しに影響する病気の症状が残ります。すぐに何とかしたいと思うのが愛好家の心理だと思いますが、残念ながらこれらの病気は秋に罹患しますので、春に症状が出てから殺菌剤をまいても急速に回復することは期待できません。今シーズンの秋に春はげ症やゾイシアンディクライン(立枯病)に対応した殺菌剤を散布して、翌年の発症を抑制しましょう。(芝美人フロアブル、モノクタジンフロアブル、タフシーバなど)

春はげ症や立枯病(ゾイシアディクライン)は、重症でなければ6~7月ごろには自然回復します。施肥によってしっかり栄養を与えながら、スーパーグリーンフードや有機酸酵素EXなどの成長促進作用がある資材を併用して修復を促してください。


芝生の害虫

5月になると害虫のリスクが一気に高まります。シバツトガやコガネムシなど、害虫の成虫が現れ始めたら卵を産み付けられている可能性があります。成虫を見かけた2~3週間後~1ヶ月後には食害が始まるという前提で、変色や枯れ、密度の低下など芝生に変化が生じないかを毎日観察しておきましょう。芝生のシーズン中は、常に何らかの害虫がいると思って警戒をしてください。

害虫かな?と思われる異変を察知したら、早めに殺虫剤(スミチオンなど)で対処しておくと安心です。

不快害虫のミミズも活動が活発になります。孵化する時期でもあり小さなミミズも多数存在することがあります。これらが大きくなって次の世代を残さないうちに早めに駆除しておきましょう。ミミズの駆除にはサポニンを含む椿油粕が効果があります。

病虫害対策については、「芝生の病害対策」「芝生の害虫対策」「芝生のミミズ対策」もご参照ください。

病虫害対策で重要なのは「芝生の健全成長」です。いかに光合成をさせて生理作用を促進させるかがポイントになります。肥料成分としては、ケイ酸やカリ、カルシウム、苦土、鉄など、光合成や健全性に関わる成分が重要になります。チッソをたくさん与えると見た目は色が濃くてきれいになりますが、与えすぎると病虫害に弱い芝生になってしまいますので、バランス良く肥料を投入してください。

また、土壌環境も、定期的にエアレーションをしながら、改良資材を投入することで良い菌が住みやすい環境を作り、悪玉菌の繁殖を防いでください。


・ケイ酸

葉の表層を強くして病原菌の侵入を防ぎます。同時に、光合成の効率が10倍になると言われる「ケイ化細胞」を増やしてくれます。


・カリ

植物は生理作用が滞ると、害虫や病原菌のエサとなる遊離アミノ酸や糖が体内に蓄積されます。カリを与えると生理作用が促進されて解消されます。


・カルシウム

カルシウムは細胞を強化して耐病性を高めます。体づくりや根張りなど、多くの機能に関わる重要な養分です。


・鉄

光合成に関わる重要な栄養素です。葉の色にも影響します。


・苦土

光合成に必要な葉緑素を構成する成分です。また、葉の色を鮮やかにする働きもあります。

これらの栄養素以外にも芝生に必要な成分はたくさんありますので、チッソ・リン酸・カリだけでなく、多くの栄養素を入れられるように資材を組み合わせてください。

関連ページ:芝生の肥料について


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寒地型西洋芝の5月の手入れ

5月は寒地型西洋芝が最も美しくなる

5月のケンタッキーブルーグラスの様子

寒地型西洋芝が最も美しく仕上がる時期です。成長が旺盛になり新葉が次々と出て密度も急激に上昇します。軽くサッチングやグルーミングをして密度を下げることにより、代謝が促されて芝生の活性が高まります。


芝刈り

週2~3回ペースが目安になります。芝刈りはできるだけこまめにした方がきれいな状態を保てますので、時間が取れる方は週3回ペースでもいいでしょう。

雨で芝刈りのタイミングを逃さないように気を付けてください。早い芝刈りは問題ありませんが、タイミングを逃して遅くなるほど葉が伸びすぎになり、芝生に負担をかけることになります。夏越しのリスクを少しでも低下させるためには、この時期からなるべくストレスを与えないようにする必要があります。


水やり

水切れが発生する可能性がある時期になりますので、週3~4回ぐらいを目安に散水してください。適度に雨が降る場合は頻度を落として調節しましょう。夏越しのための準備期間として重要な時期になりますので、水切れのストレスを与えないよう注意が必要です。


肥料

粒状肥料(固形肥料)を説明書通りに与えます。肥料によって散布時期やタイミングが異なりますので、説明書の通りに散布してください。応用的な使い方ができる方は様子を見ながらタイミングや量を調整してください。

ケイ酸やカルシウム、カリが入った液肥を併用することで、徒長の抑制や健全性向上の効果があります。また、鉄や苦土が入った液肥を併用すると、光合成が活発になるだけでなく、葉の色も鮮やかできれいになります。鉄や苦土は花の色も鮮やかになりますから、芝生に散布したついでに花壇や鉢植えにもまいておくといいでしょう。


病気

芝生にとって適温になる5月は、病原菌にとっても適温の時期です。様々な病害が発生しやすいので、症状が深刻になる前に予防資材や殺菌剤で抑制しておきましょう。

■発生の可能性がある病害
さび病、ダラースポット病、立ち枯れ病、ドライスポット(*)、ピシウム病、フェアリーリング病、フザリウム病、ヘルミントスポリウム葉枯病、炭疽病、細菌病

*ドライスポットは砂をメインにした床土で発生しやすい症状です。


害虫

害虫も活動が活発になってきます。発生数が多い場合は被害が大きくなりやすいですから、早めに対処しておきましょう。部分的に枯れる、密度が低下する、地上部分がポロポロ取れるなど、害虫の食害と思われる症状が発生したら、即効性のあるスミチオンなどを散布して駆除しておきましょう。予防的な薬剤散布をする場合は、食毒性のオルトランなどを使用します。食毒性の殺虫剤は、薬剤が芝生に浸透することによってそれを食べた害虫が殺虫されます。食毒性の殺虫剤は薬が触れて殺虫するものではありませんので、薬剤の特徴を理解して使用してください。


夏越しの準備

寒地型西洋芝は、夏になると日中の高温と強い日差しによって光合成ができなくなります。光合成ができなくなると、体内に蓄積された養分を逆転させて生存のためのエネルギーに転換します。そのため、春から夏前にかけて栄養をしっかり吸収させ、健全な成長を促して栄養を蓄積させておく必要があります。

ケイ酸、カルシウム、カリ、鉄、苦土、その他の微量葉素を適度に入れて、健全成長を促してください。5月は病虫害リスクが高まりますから、ダメージを与えて体力を低下させないように注意しておきましょう。

一般家庭では農薬をできるだけ使いたくないという要望が多いですが、寒地型西洋芝は日本の気候には適さない品種ですから、無理をさせないように適度に農薬を取り入れることを検討してください。(きれいな状態を維持することを優先するか、無農薬を優先して美しさは妥協するか、このあたりの考え方によっても対策が異なります)


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