ミミズは芝生にとっては害虫です
春や梅雨、秋に見られる写真のような小さな土の盛り上がり。これはミミズの塚です。ミミズは土壌の有機物を土と一緒に食べて、糞として排出します。この活動は土壌改良(団粒化や栄養供給)につながるため、菜園や花壇などでは益虫として認識されています。しかし、芝生では糞塚が景観を汚すことや、塚が芝刈り機の刃を痛めることから害虫(不快害虫)として位置付けられています。
芝生のミミズを放置するとどうなる?
芝生とミミズは切っても切れない関係にあります。その理由は「芝生がその場で代謝(古いところから枯れてゆく)を繰り返すことでミミズのエサが自動的に供給される」ことにあります。エサがある限りミミズは生殖活動によって子孫を残し続けますから、芝生が餌場として代々受け継がれていくわけです。
最初は少なかったはずのミミズも、次の世代の卵を産むたびに増えていきます。ミミズが増えると土壌有機物(古い根、サッチなど)を食べて分解し土に戻すという土壌改良効果があるのですが、芝生の場合は喜んでばかりはいられません。盛り上がったミミズの塚は、芝刈り機の刃を傷める原因になりますし、景観も悪くなり気持ちのいいものではありません。
また、ミミズの糞塚周辺の芝が赤くなるなどの症状を確認しており、生理的な悪影響を及ぼす可能性もあります。
病害との関連については、ミミズの塚が密集している個所の方がラージパッチの症状が重くなりやすい傾向もありました。ミミズが直接芝生を害することはありませんが、糞塚によって様々な障害が起きる可能性があります。ですので、ミミズは芝生にとっては害虫であると認識しておいた方がいいでしょう。病原菌が付着したミミズがあちこち這い回ることを想像すると、芝生愛好家としては容認できません。
2024年6月27日追記:以前はミミズがラージパッチを助長しているのではないかという疑いを持っていましたが、その後の糞塚の様子を観察しているうちに逆ではないかという見解にたどり着きました。ミミズがラージパッチを助長しているのではなく、ラージパッチによって枯れた葉や根(ミミズにとってのエサ)が増えることでミミズが寄って来るのではないかと思われます。
ミミズの駆除とラージパッチの対策は別の案件としてお考えいただいた方がいいでしょう。
ミミズの塚が増え始めて景観を損ねている様子。大量に塚が発生すると、芝刈り機の刃にも悪影響があります。薄く確認できるラージパッチの境界部分に塚が多数あるのも興味深いところです。
ラージパッチの境界付近に密集して発生しているミミズの塚。大量にできることで、土壌表層のPHバランスが崩れたり、踏みつけた塚が土壌通気性を阻害するなどの悪影響が考えられます。あまり想像したくはないですが、ミミズに病原菌が付着したまま動き回ることもあるのかも?
2024年6月27日追記:上記しました通り、ラージパッチによって増えたミミズのエサ(枯れた葉や根)に寄ってきているものと思われます。
ミミズの塚の周辺で赤く変色する芝。病害か生理障害かは分かりませんが、何らかの影響があることがうかがえます。
ミミズの駆除
ミミズの塚は、3月~梅雨時期と9月~11月頃に多く発生します。多発する前に駆除することがポイントになります。特に3~4月にかけては、小さなミミズがたくさんいますので、これらが成長する前に駆除しておくと次の世代の卵を産む前に駆除できます。
管理人はミミズの駆除に「椿油粕」を使用しています。椿油粕にはサポニンという天然の界面活性剤(天然の石鹸)が含まれています。椿油粕を1m2あたり100g(3~4握り程度)散布し、サポニンを染み出させるようにたっぷり散水すると、土壌に浸透したサポニンによって体表のぬめりが除去されるのを嫌がったミミズが地表に逃げ出してきます。ミミズは地表に出ると紫外線を浴びて死んでしまいます(もしくは鳥のエサとなる)。まれに地表に出てこないこともありますが、その場合はその後ミミズの塚ができるかどうかで判断してください。
たっぷり散水の目安は平米あたり10リットル以上の散水になります。我が家の芝生の面積は40平米ほどですが、たっぷり散水する場合は20~30分ぐらい散水シャワーを使って散水しています。(10リットルバケツが約30秒でいっぱいになりますから、平米あたり30秒×40平米=20分以上 を目安にしています)
実際の散水では同じ場所に30秒間ずーっと散水するのではなく、色を塗り重ねていくような感じでふんわりと少しずつ土に染み込ませる要領で散水しています。じわじわとしみ込ませるのがポイントです。
サポニンを含む資材は、ミミズ以外の害虫もサポニンによる呼吸阻害や生理障害で忌避が期待できます。ただし、ミミズやナメクジなどヌメリを持つ生き物のような劇的な効果は望めないでしょう。あくまでもミミズやナメクジなどのついでに忌避できたらラッキーぐらいに考えておいた方がいいと思います。
※コガネムシの幼虫は相当生命力が強いようで、地表に逃げ出してきたら捕殺する方が確実です。死んでいるように見えても生きていて(仮死状態?)、放っておくと息を吹き返してしまうことがあります。椿油粕でコガネムシの幼虫の駆除ができますか、という問い合わせもいただくことがありますが、コガネムシの幼虫の駆除はほぼ無理だと思っていただいた方がいいでしょう。
椿油粕にはペレットタイプと顆粒タイプがありますが、芝生の隙間に入りやすい顆粒タイプがお勧め。100g/m2程度を目安に散布します。一握りが20~30g程度ですので、平米あたり3~4握りほどになります。
資材からサポニンを染み出させるように、じっくりたっぷり散水します。事前に土壌を湿らせておくと資材の浸透性が高まります(雨の後も良い)。管理人は雨の直前に散布して散水を横着することもあります。雨天でもある程度は駆除できます。
早い時には散水している最中にミミズが地表に出てきます。ミミズが深い所にいたり気温が低くて活動が鈍い場合は、30分以上時間がかかることもあります。地表に出てきたミミズは紫外線で大半が死滅しますが、より確実な方法は捕殺です。ミミズが出てくる間、しばらく目を離していている隙に鳥に食べられることもあります。
芝生に隣接する花壇や菜園などがある場合は、そちらも同時にミミズ対策をしておくとより効果的です(芝生から菜園に逃げたり、菜園にいるミミズが侵入してきたりする)。土壌に浸透したサポニンは数日で分解されます。サポニンは化粧品や食品にも使われる成分ですのでお子様やペットがいても安心して使えます。
椿油粕で対策をしたけどミミズが出てこなかったのはなぜ?
椿油粕で対処したのだけど、思うような効果が無かったという問い合わせを時々いただきます。この場合いくつか原因が考えられます。
散水をしなかった
今までの問い合わせの中で一番原因が分かりやすかったのがこれです。椿油粕に含まれるサポニンという成分を土壌にしみこませないと作用しませんから、椿油粕散布後は必ず散水をする必要があります。
散水量が少なかった
表層を濡らす程度の散水ですと、サポニンが土壌にしっかりしみこまないことがあります。ミミズが潜んでいる深さまでサポニンが届かなければ効力を発揮しませんので、ミミズが出てくるまでたっぷり散水してあげることが重要です。
地表に出てくるまでに力尽きた
サポニンが効果を発揮したのだけど、ミミズが深い場所にいたため地表に出てくるまでに力尽きてしまったというケースも考えられます。この場合は、その後新たな塚ができるかどうかで判断してください。もし新たな塚ができるようなら再度椿油粕で処置をします。施用量を守っていれば、1週間後ぐらいに連続散布しても過剰障害は出ません。
鳥などに食べられた
これは私の自宅であった事例ですが、散水後しばらく目を離している隙に地表に出てきたミミズが鳥に食べられてしまったというケース。散水時にミミズが出てきていることは確認していたのですが、1時間後ぐらいに見るとミミズが全くいませんでした。逃げられたのかと思ったのですが、その後新しい糞塚ができなかったことから、おそらく鳥に食べられてしまったのだろうと判断しました。
塚の数の割りにミミズの数が少ない
塚がたくさんあったのにミミズの数が少ないのだけど。こういう問い合わせも時々いただきます。糞塚の数とミミズの数は必ずしも比例しませんので、ミミズの数が少なかったからといってがっかりしないでください。この場合も、その後新たな糞塚が発生するかどうか様子を見てください。
土の盛り上がりがミミズではなかった
問い合わせを詳細に伺うと、土の盛り上がりがミミズではなかったというケースもありました。この場合はミミズがいませんから、椿油粕で処置をしてもミミズが出てくることはないでしょう。ページ下部にミミズではない場合の土の盛り上がりを掲載していますのでご参照ください。ミミズの塚は粒状の団粒構造になっていること、穴は無いことが特徴です。
ミミズの糞塚に似ているもの
ミミズの糞塚は写真のように粒状(団粒構造)になっているのが特徴です。
これはコガネムシと思われる塚。掘り出された土が団粒構造になっていないことと、数ミリほどの穴が開いているのが特徴です。
これはアリ塚。掘り出された土が砂状の山となり、巣の出入り口となる穴もあります。キトサン溶液スーパーグリーンや木酢液を定期散布していると蟻の抑制効果があります(蟻の種類によっては効果が低い場合がある)。
ミミズを完全に駆除することはほぼ無理
芝生から完全にミミズをいなくすることはできないのか、これもよくいただく問い合わせですが、現状では完全駆除というのはほぼ無理だと思われます。椿油粕で駆除したとしても、100%ミミズ駆除をすることはできませんからある程度は生き残ります。
また、時期によっては次世代の卵を産み付けられているでしょうし、椿油粕で対策をしたとしても卵まで駆除することはできません。すると次の世代が生まれてくることになります。
冒頭でも書きましたが、芝生は無限にミミズのエサを生み出す環境にあるためエサに困ることも無く、すくすくと成長することでしょう。
そのため、芝生とミミズは切っても切れない関係と割り切り、早め早めに駆除して先手を打つか、糞塚の発生が我慢できないレベルになったら駆除する形にするか、何らかの方法で対策を取る必要があるでしょう。
芝生とミミズの共存はできないのか
管理人宅ではキトサン溶液スーパーグリーンの定期散布(週1回ペース)をしており、本来は芝生の活性化や土壌改良、微生物環境の改善を目的とした散布になります。このキトサン溶液スーパーグリーンの定期散布をするようになってからミミズの糞塚の形成がかなり減るという現象を確認しています。
この資材には酢酸(お酢の成分)が含まれているのですが、散布をすることによって土壌表層に酢酸の層ができ、それをミミズが嫌がって糞塚の形成が抑制されているのではないかと推測しています。
当然ながら、雨が続くような時には表層の酢酸の層が流されたり成分が薄くなるため、その影響で効果は低下するようですが、それでも散布していない場所と比べると糞塚の形成は少なくなる傾向にあります。
晴れている時には糞塚の発生が少なくなりますし、できる糞塚も小さい物がほとんどなのでより目立たないのが特徴です。
糞塚の形成がゼロになるわけではありませんが、糞塚形成の度合いが許容できるようであれば、ミミズとの共存が可能なのではないかと考えられます。もし共存できるのであれば、不快害虫ではなく余分な土壌の有機物やサッチを分解してくれる益虫として活躍してもらうことも可能かと思います。
椿油粕での駆除を停止して2年目となり、芝生の土壌には相当数のミミズが潜んでいると思われますが、我慢できないほどの糞塚ができることもなく、共存の可能性に期待しているところです。
この項の最初に書きましたように、キトサン溶液スーパーグリーンの本来の散布目的はミミズ対策ではありませんので、駆除ができるとか、糞塚が全く無くなる、といった過大な期待はしないでください。あくまでも芝生の活性化や土壌改良、環境改善をするついでにミミズとの共存ができるかもしれない、そんな感じでお考えいただければと思います。