芝生の種類

芝生って何だろう

一口に芝生といっても様々なものがある

みなさんが『芝生』という言葉から想像するのはどんな光景でしょうか。公園に芝生が生えていて人々が遊んでいたりくつろいでいたり、庭が緑の絨毯のようになっていたり、擦り切れてハゲハゲになっているような芝生だったりと、一口に芝生と言っても、思い浮かべる光景は様々だと思います。では、芝生とは本来どういうものをさす言葉なのでしょうか。

芝生の定義は様々ありますが、基本的には『特定の種類の芝草が一面に生えている状態』になります。芝草とは芝生の品種のことです。姫高麗芝が一面に生えている、ケンタッキーブルーグラスが一面に生えている、そのような状態を『芝生』と言います。

さて、一面に同じ品種や特定の種類の芝生が生えていたらどこでも同じ仕上がりになるでしょうか。答えはもちろんノーです。例えば、パッティンググリーンも家庭の芝生もどちらも特定の種類の芝草が一面に生えている状態ですが、目的が全く異なりますので見た目や仕上がり感が全く違ってきます。また、管理コストを優先した『鳥取方式®』のように、特定の芝草と雑草も一緒に刈り揃えることで芝生化するという考え方もあります。公園ではほぼ放置されている状態の芝生もあります。

このように芝生と言っても、その目的や目指す仕上がりによって状態が全く異なってしまいます。芝生って何だろう、この問いに対する答えは、『どういう芝生を目指しているのか』によって人それぞれであると言えます。自分だけの芝生、自分だけの芝生管理のスタイル、こういったものを追求するのも、芝生の手入れの楽しみの一つだと管理人は感じています。


芝生の魅力とは

心地よさと癒しは芝生の大きな魅力

芝生の魅力として最も大きな要素は『心地よさ』や『癒し』といった心理的なものでしょう。芝生を植えようと思い立ったみなさんも、頭の中では緑の絨毯で癒されるシーンや、子供やペットが楽しそうに遊んでいる姿を思い浮かべていたのではないでしょうか。親や飼い主にとって、子供やペットが楽しそうに遊んでいる姿を見るのは、大きな喜びであり同時に癒しや心地よさを感じると思います。

公園やグラウンドなどでも、土か芝生かでテンションが大きく異なるのは否めません。実際に校庭緑化をした学校では、校庭で遊ぶ子供が増加したというデータが多々あります。緑の絨毯で遊ぶワクワク感は、子供も大人も変わらないということでしょう。芝生が人間に与える気持ちよさは、とても大きな影響があると言えます。

芝生に心地よさや癒しを感じるのは遊ぶシーンばかりではありません。刈り揃えられて美しい絨毯のように仕上がった芝生は、毎朝カーテンを開けるのを楽しみにしてくれます。窓から見えるきれいな芝生に心を癒され、部屋の中にいても心地よさを感じます。管理人も、朝カーテンを開けるとついニヤニヤしてしまい、うっかり近所の人に見られないように注意が必要です。

心地よさと癒しは、芝生の大きな魅力と言っていいでしょう。


照り返しの熱を防止

20~30年前と比べると夏の最高気温は5度以上高くなり、日差しも強烈になっています。芝生はその強い日差しの照り返しを防いでくれ、地温の上昇も土やコンクリ、アスファルトと比較すると、格段に低く抑えてくれます。これも芝生の魅力の一つでしょう。

管理人宅で実際に地表温度の比較をしてみたデータが下記のグラフです。

芝生との温度差比較グラフ

土やアスファルト、コンクリートが直射日光に晒されるほど熱が蓄積されてゆき、その熱さは素手や素足では触れられないほどになりますが、芝生は直射日光に晒され続けても一定の温度以上には上昇せず、日差しが弱くなると温度の下降も早いのが特徴です。

下記のグラフでは、日差しが雲にさえぎられるとすぐに温度が下がる芝生に対して、土やコンクリ、アスファルトは蓄熱されて温度が下がりにくいことが分かります。

芝生との温度差比較グラフ2

芝生を植えることによって照り返しのまぶしさや熱が防げるのも魅力ですね。


ほこりやぬかるみの防止

芝生を植えると当然ながら土が隠れますので、風による土ぼこりを防ぐことができます。近年の校庭緑化では、近隣への配慮としてほこり防止も魅力の一つになっているようです。

土がむき出しのままですとぬかるみになって靴などが汚れ不快な思いをすることがありますが、芝生を植えるとぬかるみが防止できます。不陸によってへこんでいる場所には水たまりができますが、その場合にも泥でべちゃべちゃになることはありません。


芝草の種類

芝生を大別すると日本芝、西洋芝、暖地型、寒地型がある

芝生にはさまざまな種類がありますが、大別すると日本芝と西洋芝に分類されます。西洋芝には暖地型(日本芝と同じく冬になると枯れるタイプ)と寒地型(冬でも緑を保てるタイプ)があります。


日本芝

日本芝は国内で最も普及している芝と言ってもいいでしょう。旺盛な成長を見せるのは月から10月ぐらいで、冬は休眠して枯れてしまいます。枯れるのは地上部だけで根は生きていますから、翌年の春になるとまた新しい葉が生えてきます。

日本芝は全般的に葉が固めで、素足で歩くと多少チクチクする感はあります。刈り高を高めにすることで緩和されます。中には柔らかい葉に改良されている芝草もあります。

日本芝と言っても大きく分けて三種類あり(野芝、高麗芝、姫高麗芝)、近年ではそれぞれの改良型品種がたくさん登場しています。そのため、細かな特性が異なる芝草が存在していますが、ここでは主だった分類でご紹介します。


野芝

葉幅が広く密度は上がりにくく、草丈も伸びにくい芝です。他の日本芝に比べて気温や渇水などの耐性が高いため、公園や公共用地の緑化、管理コストを抑えたいゴルフ場のラフなど、こまめな手入れができない場所でよく使われています。北海道や高高度でない地域を除いて、ほぼ全国で栽培可能です。

葉が荒いため一般家庭で美しい緑の絨毯を希望する方にはやや不向きでしょう。(庭が数百平米ぐらいあればきれいに見えると思います)


高麗芝

野芝よりは葉の幅が狭く、一般家庭の緑の絨毯にも適している品種です。ホームセンターや園芸店でも扱っていることが多く、入手しやすい芝草です。北海道や高高度でない地域を除いて、ほぼ全国で栽培可能です。

野芝よりきれいに仕上げることができますが、それなりの手入れが必要になります。

出穂(しゅっすい)は春だけです。


姫高麗芝

管理人宅でも植えている芝草です。高麗芝よりも葉が細く、密度の高い絨毯のような芝生に仕上がります。北海道や高高度でない地域を除いて、ほぼ全国で栽培可能です。

高麗芝は出穂(しゅっすい)が春だけですが、姫高麗芝は春と秋に出穂します。穂が出たらどうすればよいのかについては、こちらのページを参照してください。『芝生に穂が生えてきた


TM9

近年人気を博している芝草で、高麗芝の改良品種になります。通常の高麗芝に比べて葉が柔らかく、草丈があまり伸びないように改良してありますから、芝刈りの頻度を落とすことができます。

ただし、密度を上げるために積極的に施肥や散水をするとそれなりに成長することがありますから、成長具合によってはメーカーの説明通りの管理では対応できないかもしれません。

葉が柔らかい分、病虫害リスクは少々高くなることも想定されますので、省力管理ができるからといって放置しすぎるのもよくないでしょう。

省力管理を優先するか、仕上がりの美しさを優先するかによって、手入れの内容が変わります。


暖地型西洋芝

日本芝とほぼ同じような生育をしますので、3月から11月ぐらいまでが緑化期間となります。西洋芝ですので葉が非常に柔らかく絨毯のようなターフを形成します。

西洋芝は全般的に成長が旺盛な品種が多く、芝刈りの頻度は日本芝の2倍から3倍になることを想定してください。平日に芝刈りをすることができない方は、日本芝にしておくか、西洋芝でも草丈が伸びにくい品種を選ぶことをお勧めします。成長旺盛な分、廃棄する刈り草も多くなります。

ティフトン

バミューダグラスの一種で、成長旺盛で擦り切れからの回復が早いことから、スポーツターフや校庭緑化などで使用されることが多い芝草です。春の立ち上がりが早い特性を利用して、オーバーシードのベース芝として使われることもあります。等間隔でポット苗を植える『鳥取方式®』で使われていたことから知名度が上がりました。

非常に成長が早いため軸が上がりやすく、相当こまめに芝刈りをして軸が上がりにくくするか、シーズン途中で地際まで刈り込んでしまうなどの対応が必要になります。一般家庭では管理面でもてあますことがあるかもしれません。また、バミューダグラスはランナーが地中ではなく地表を這う性質がありますから、ランナーが浮きやすいという一面があります。

ティフトンを改良して草丈が伸びにくくしてあるティフアートなら、旺盛な成長によって困ることは少ないでしょう。一般家庭で育てる前提であれば、バミューダグラスの中ではティフアートが比較的楽なのではないかと思います。


写真の芝草はティフトンを改良したティフアート。高麗芝などの日本芝と比較して、やや葉がカール気味なのが特徴です。西洋芝ですから葉が柔らかく素足で踏んでもあまりチクチクした感じはしないでしょう。

バミューダグラスは全般的に肥料食いの傾向が強く、しっかり肥料を与えることで旺盛な成長を見せてくれます。


リビエラ

バミューダグラスの中では一番濃い緑になる芝草です。ティフトンより葉が緻密で密度の高いターフを形成します。春の初期成長はティフトンよりやや遅い傾向がありますが、シーズン中の擦り切れ耐性は優秀です。

バミューダグラスの特性である地表を這うランナーが、ティフトンよりは浮きにくいという特徴もあります。


寒地型西洋芝

一年中緑の芝。この言葉に憧れを持つ芝生ファンも少なくないでしょう。寒地型西洋芝はその名の通り寒い地域に適した芝生ですから、冬でも緑を保つことができます。エバーグリーンを目指すなら寒地型西洋芝も選択肢の一つです。

ただし、注意しなければならないのは、寒地型西洋芝の大半が日本の気候(特に高温多湿の夏)には適応できないということです。寒地型西洋芝の夏越しは難易度が高く、農薬無しでは困難を極めるでしょう。もし寒地型西洋芝を植えるのであれば、農薬を使う前提で検討することをお勧めします。

また、寒地型といえども冬の寒さが厳しくなると、アントシアンによる変色や一部の葉が枯れるなど、それなりに影響が出ます。真夏と真冬には何らかの障害が発生するけど一応常緑である、ぐらいに考えておいた方がいいと思います。

暖地型西洋芝と同じく、適温期の成長はかなりの勢いがありますから、芝刈りの頻度は日本芝の2倍から3倍程度になり、廃棄する刈り草の量もそれなりになります。平日に芝刈りなどの手入れができない方には、維持は難しいでしょう。

いろいろ難しさはありますが、適温期にきれいに仕上がった時の美しさはその分感動も大きく、苦労が報われるでしょう。


ケンタッキーブルーグラス

寒地型西洋芝の中では最もポピュラーな品種と言ってもいいでしょう。北海道では公用地に使われることも多く、ホームセンターで普通に販売されている品種です。本州では寒地型西洋芝の育成が難しいことから、あまり一般的に扱われることはありません。

葉はやや太めでベントグラスのような緻密さはありませんが、踏圧には比較的耐性があり損傷後の回復も早いことから、スポーツターフとしても用いられることがあります(サッカー場など)。

近年では、品種改良によってやや緻密なものや病害耐性を高めたものなどが出ていますので、管理の負担軽減には改良品種を採用することが有効です。


クリーピングベントグラス

芝草の中では最も低刈りに適しており、繊細で緻密なターフを形成する品種です。寒地型ですので低温には比較的強いですが、日本(特に本州以南の暖地)の夏の気候には適していないため、夏枯れなどの様々なトラブルが発生します。

ベントグリーンと言われるように、主にゴルフ場のパッティンググリーンで使われる品種で、3ミリ4ミリの低刈りに耐えながら緻密なターフを形成します。ゴルフ場のグリーンレベルで維持するためには、相応の手間とノウハウが必要になります。

元々は夏に弱い品種でしたが、近年では品種改良が進んで以前よりは暑さの耐性が高いものが増えています。また、病害体制を高めた品種も増えています。改良品種を選択することによって、夏越しや病虫害の負担を減らすことができます。

種子繁殖(種で増えるタイプ)と栄養繁殖(ほふく系でも増えるタイプ)があり、夏枯れや病虫害などからの回復には栄養繁殖タイプの方が再生が早いという特徴があります。