
芝生に適した土壌環境・床土作り
根を張る土壌は芝生にとって大切な要素
植物にとって大切な土壌。芝生も例外ではなく、床土の構造や土壌の状態によって大きく影響を受けます。芝生を張った後は、耕すこともできませんし、土を入れ替えることも容易ではありません。そのため、芝生を張る前にできるだけ最適な環境を整えておくことが大切です。
芝生は水はけの良い土壌環境が適している

芝生は水はけや通気性のよい土壌を好みます。水たまりができやすい場所や常にジメジメした場所では、芝生はうまく成長することができず、密度が上がらなかったり、最悪は枯れてしまいます。また水はけ不良は、芝生の病気や害虫の発生リスクを高め、苔(コケ)や藻類、キノコの群生など、さまざまな問題が生じやすくなります。こういった不具合を防ぐためにも、床土作りの段階で水はけを少しでも改善しておくことをお勧めします。よほどの特殊な土壌でない限り一般家庭で水はけが良すぎることは無いでしょうから、大半の庭が水はけを改善する方向の土壌改良になると思います。
実は、管理人宅はとても水はけの悪い床土の構造をしています。根を張ることのできる有効土壌は表層10~15センチぐらいで、小石も多く含まれている上、水はけの悪い粘土質の土壌です。その下の層はスコップを刺すのも苦労するほど固く、排水性も良くありません。これが一番後悔している点であり、できるだけ改善しておくことをお勧めする理由でもあります。
芝生が好む土壌環境を作るには
芝生が好む土壌環境にするには三つの方法があります。
1.透水性や通気性を保ちながら、保水力・保肥力もある土壌にする(土壌改良)
2.表面に傾斜をつけて雨水が流れるようにする(表面排水)
3.床土から外部へ水が抜ける構造を作る(暗渠排水)
全部改善しておくのが理想ですが、コストや労力との兼ね合いで検討する際の優先順位は1→2→3になります。次の項でこれらの詳細について解説します。
土壌改良で透水性と通気性を改善する
土壌改良にて水はけを改善するには、それに適した資材を土壌に混ぜることが有効です。床土作りのためには、表層20~30センチ程度を耕して石はできるだけ取り除く必要があります。その際に次の資材を土壌に混ぜてください。
川砂を混ぜる
元の土に対して3~5割ぐらい(平米60~100リットル)の割合で混ぜます。砂が大量に必要になる場合は、造園業者や砂を扱っている建材業者にお願いすると安く購入できます(ダンプトラックなどを使ってトン単位でごっそり運んでもらえます)。砂を大量に入れますと、その分グランドレベルは上昇しますので、それを前提に計画を立ててください(あらかじめ表層の土を除去しておくなど)。
良質の堆肥
堆肥は土壌改良には欠かせない資材です。理想の土壌構造と言われる団粒化を促す作用や、土壌の保肥力を高める効果、化成肥料では補いきれない微量葉素を供給する作用などがあります。管理人がお勧めする堆肥はスーパーグリーンフードです。この堆肥には発根を促す作用もありますので、芝張り後の活着(根付き)が良くなることが期待できます。また、有用微生物を豊富に含んでいるため、芝張り後に起きやすい病害リスクの低減作用もあります。
バーク堆肥や腐葉土も土壌改良の作用がある資材なのですが、これらをたくさん入れますと、有機物をエサとするキノコが多量に繁殖することがあります。キノコはフェアリーリング病と言われるように、芝生にとっては有害な存在です。できるだけ発生を抑制するためにも、床土に有機物を多量に入れることは避けてください。芝生を育て続けると、嫌でも土壌に有機物(古い根や葉)が増えますので、あらかじめ入れる必要は無いでしょう。スーパーグリーンフードは完熟堆肥となり、有用微生物も多量に含まれる資材ですから、キノコを抑制する効果があります。
必要最低限という意味では、上記の2種類だけでもいいでしょう。下記の資材はお好みによって検討してください。
・パーライト(黒曜石)
黒曜石のパーライトは透水性・通気性向上の効果が期待できる資材です。地表20~30センチに混合するとして、平米あたり5リットル程度が目安となります。パーライトには黒曜石と真珠岩の二種類があり、求める効果は異なりますので購入の際には注意してください。
・バーミキュライト
透水性・通気性向上の効果が期待できる資材です。ただし、保肥力や保水力も兼ね備えていますので、元々保肥力の高い土壌にはたくさん入れない方がいいでしょう。地表20~30センチに混合するとして、平米あたり2~3リットル程度が目安となります。
・ピートモス
通気性向上が期待できる資材です。土壌が中性からアルカリ性の場合はPH調整していないピートモスを入れると弱酸性に矯正できます。土壌を酸性に偏らせたくない場合はPH調整済みのピートモスを使用してください。
水はけが良すぎる場合の土壌改良
一般家庭ではほぼ無いと思いますが、土壌が砂質で水はけが良すぎる場合は、保水力や保肥力を高める作用のある資材を混合して改良します。バーミキュライト、真珠岩パーライト、完熟堆肥、腐葉土、ピートモスなどが該当します。
表面排水で敷地内からの排水性を高める
芝生を造成する際、表層に傾斜をつけ、雨水が流れやすくしてやることで表層の水はけを改善する作用が働きます。雨水枡や側溝などに向かって2~3度ぐらいの傾斜をつけて水が流れるようにしてください。
暗渠排水(あんきょはいすい)で床土に浸透した水を排出する
床土に浸透した水を効率良く排出するには、暗渠排水が有効です。床土の深さ30~40センチ程度のところに排水用のパイプを通し、敷地外に向かって水が排出される構造を作ります。パイプに向かって水が集中する構造にしておくとより効率よく排出されるでしょう。
ただし、暗渠排水はやや大掛かりな工事やそれなりの資材が必要になるため、コストがかかるのがネックです。DIYでやるのはあまり向かない工事でしょう。排水パイプの設置が浅いと、その部分だけ特に排水性が高くなるため、保水のムラができることがあります。
お手軽な土壌改良
最近では必要な資材をあらかじめ混合してある、芝生の床土を造成するための資材もあります。お手軽に土壌改良する場合は、こういった資材を適量混ぜ合わせて済ませる方法もあります。また、花や野菜の培養土を少量混ぜてやることでも土壌改良できます。ただし、花や野菜の培養土は有機物が多めに含まれていますので、多量に入れすぎると後々土壌が沈んで不陸(ふろく:でこぼこのこと)の原因になることもありますので、ほどほどにしてください。
床土の土壌改良はどこまでやるべきか
ここまで土壌改良の方法を解説してきましたが、では一体どこまでやっておくべきなのでしょうか。管理人宅がそうであるように、少々水はけが悪いからといって芝生が育たないわけではありません。日当たりと風通しが良好な場所であれば、多少の水はけ不良は耐えられるでしょう。
はっきり言えるのは、水はけが良すぎて問題が出ることはほとんど無く、水はけが悪くて生じるリスクは多いということです。冒頭で書きましたが、管理人が日常の手入れをする中で一番後悔している点は水はけです。これを前提にコストや労力との兼ね合いで検討してください。必要最低限として、耕起と小石などの除去は行っておくことをお勧めします。
【必須】
・耕起
・小石など根の邪魔になる物の除去
【できればやっておきたい】
・川砂を混ぜる
・堆肥を入れる
・その他改良資材を入れる
・表面排水
・暗渠排水