芝刈りの目的や時期、頻度、芝刈り機の選び方
手入れの醍醐味と言えば芝刈り
芝生の手入れの醍醐味と言えば、やっぱり「芝刈り」です。いい芝刈り機を使ってきれいになっていく芝生を見ていると、いつまでも芝刈り機を走らせていたいという気持ちになります。ここでは、芝刈りの目的や注意点、芝刈り機の選び方などについて解説してみたいと思います。
なぜ芝刈りするの?
芝生を植えた方が目指すのは、密度があって絨毯のように美しい芝生でしょう。美しい芝生に仕上げるためには芝刈りが欠かせません。芝生は、芝刈りによって上への成長を止められると、芽数を増やして密度が高くなる性質があります。これは、生き残るための本能であり、芝刈りによって葉が短くなる分、葉の数を増やして光合成を活発にする作用であると考えられます。この性質を利用して、こまめに芝刈りをすることで密度の高い絨毯のような芝生に仕上げることができます。
芝生を伸ばしっぱなしにすると、密度が上がりにくいだけでなく害虫のすみかになることもあります。また、軸(茎)も伸びますから、軸刈り(茎の部分を刈ってしまい、葉が無くなること)のリスクも高くなります。軸刈りで葉の部分が無くなると光合成ができませんから、体内に蓄積された栄養を使って葉を伸ばそうとします。これは体力を消耗することになりますから、軸刈りを繰り返すと徐々に芝生は弱っていきます。このように、芝刈りをせずに伸ばしっぱなしにすることにあまりメリットはありません。
美しさだけでなく、芝生を健全に保つ意味でもこまめな芝刈りを欠かさないようにしてください。
芝刈りの時期
日本芝(高麗系の芝)の場合、4月~11月ごろにかけて芝刈りをする必要があります。春は、刈り揃えたい長さの3割から5割増しぐらいの長さになってきたら芝刈りをスタートしてください。立ち上がり時期は月2~3回でも大丈夫ですが、旺盛に成長しはじめたら週1回ペースにしてください。きれいな絨毯のような芝に仕上げるためには、週1回の芝刈りは欠かせません。
シーズン最初に気をつけたいのは、際の部分です。際の芝生は他のところに比べてよく伸びますので、そこだけが長くなってしまうことがあります。そのままにしておくと、全体を芝刈りした時に際だけが軸刈りになってしまうことがあります。際の部分がよく伸びているようなら、早めに刈ってしまいましょう。そうやって全体の長さが揃うようにしておけば、軸刈りになる心配はありませんし、見た目もきれいに見えます。 芝生の成長が旺盛な時期には、週1回くらいのペースになります。
際の部分はよく伸びます。ランナーが密集しやすかったり、人に踏まれにくいのが原因でしょう。ハンディバリカンなどで他の長さとそろえておけば、軸刈りの心配がなくなります。
刈り高と管理の難易度
一般家庭の高麗芝なら20ミリぐらいが、美しさと維持のしやすさのバランスがよいでしょう。短く刈り揃えることに成功すればきれいに見えるのですが、刈り高がひくくなるほど刈りこみ回数が増えたり、頻繁な不陸修正(ふろくしゅうせい:デコボコを直すこと)、水切れしやすい、雑草が生えやすいなど、手間も増えます。
刈り高が低くなるとその分葉も短くなります。葉には栄養が蓄えられており、天候不良によって光合成ができなくなった場合は、葉にたくわえた栄養を使って生き延びようとする現象が起きます。しかし、葉が短いとその生存機能が弱くなりますから、天候不良の影響を受けやすくなります。さらに、葉が短いことで光合成の効率も落ちます。これらのことからも、刈り高を低くするほど管理が難しくなると言えます。
ゴルフ場のグリーンのように短くする場合は、通常の芝生とは全く別物であるという前提で管理しなければなりません。あの環境を維持するために、給料をもらって働いているプロがいるということからも、難しさと手間が想像できると思います。
芝生の手入れにかけられる時間と相談しながら、刈り高を調整してください。管理人宅は20~25ミリぐらいで維持しています。
際刈りも大切です
芝刈り機の構造上、芝の際の部分を刈ることができません。しかし、際まできれいにそろっているかどうかが全体の美しさに影響します。ですので、芝生の際刈りというのはとても重要なのです。際刈りにはハサミかハンディタイプの電動バリカンを使用します。両方あれば、よりきめ細かな際刈りができるでしょう。電動バリカンは充電式のコードレスタイプがおすすめです。
ハンディバリカンで際刈りをする様子。芝生の際の部分がビシッとそろうと、とてもきれいに見えるのです。
ハンディバリカンは充電式のものがおすすめ。電源コードが無く動きの自由度が高いので、際刈りがとても楽になります。
エッジカッターがあると、枕木などの境目をきれいにそろえるときに便利です。芝生の生長が旺盛になると、すぐに伸びてきた芝生に覆われてしまいます。
土壌の視点から芝刈りを見る
芝生は土壌に存在する肥料(栄養)を吸収し、光合成によって成長します。成長した芝を刈り取ることは、土壌から栄養を奪うことでもあります。そのため、栄養を与えずに芝刈りを続けると、いつかは必ず栄養不足の症状が現れます。また、肥料を与えたとしても、芝刈りによって奪われる栄養の量を下回っているといつかは栄養不足の症状が発生するでしょう。芝刈りを繰り返してきれいに仕上げるためには、しっかりと栄養を与える(施肥)ことも重要であると言えます。
また、芝生は手入れをする限り代謝をしながら永久にその地に育ち続けます。これは農作物で言うと連作障害が発生しやすい状況でもあります。連作障害とは、同じ種類や同じ科の作物を連続して作ることによって、土壌の栄養バランスが崩れて生理障害などの様々な症状が発生することです。芝生も連作障害が発生しやすい環境にありますから、栄養バランスもきちんと考えた施肥が重要です。
関連ページ:芝生の肥料について
芝生のつくりを理解する
姫高麗芝は下から根、ほふく茎(ランナー)、直立茎、葉となっており、直立茎と葉の境目を生長点と言います。芝刈りは「葉」を半分以上残して刈るのが理想とされ、伸びた芝生の3分の1程度を刈るのが基本です。芝生の長さを20ミリにそろえる場合、30ミリ程度に伸びた時点で芝刈りすると理想的な芝刈りになります。
芝刈りにおいて、生長点より下を刈ってしまうことを「軸刈り」と言います。軸刈りになってもすぐに芝生が枯れてしまうようなことはありませんが、芝生にダメージを与えるだけでなく、白い茎が見えて見た目も美しくありません。できるだけ軸刈りにならないように気をつけてください。
芝生の断面。直立茎と葉の境目が生長点で、それより下を刈ると直立茎が露出してしまい「軸刈り」となります。葉を半分以上残して刈れるように、芝生の伸び具合を見ながら芝刈りをしてください。
軸刈りになると、このように直立茎が露出します。この程度の軸刈りならすぐに復活しますので心配ありませんが、全体が軸刈りになるような刈り方は避けてください。芝生の伸ばしすぎや低刈りだけでなく、不陸(地面のデコボコ)も軸刈りの原因となります。
基本的に芝生はかなり強い植物ですから、一度や二度の軸刈りで枯れてしまうようなことはありません。しかし、20ミリの刈り高で軸刈りになったとすると、軸の高さは20ミリになっていますから同じ刈り高で芝刈りを繰り返す度に軸刈りになります。芝刈りの度に軸刈りになり体内に蓄積された栄養を使って新しい葉を出す、これを繰り返すと徐々に芝生が弱っていきます。ですので、軸刈りにならないように対処することが必要です。
一度上がってしまった軸は元に戻ることはありませんから、刈り高を上げて葉が残る部分を確保するか、思い切って低刈りして軸を下げてください。一般的には徐々に下げるという解説が多いですが、日本芝の場合は低刈りしてしまうことをお勧めします。芝刈り機の一番低い刈り高で軸をできるだけ低くし、その後高めの刈り高で芝刈りを繰り返せば葉の伸びる余地ができますから、軸刈りにならなくなります。
芝刈り機の選び方
芝生の面積
芝刈り機選びに一番影響するのが「芝生の広さ」です。30坪以内なら手動か電動、30坪以上なら電動もしくはエンジン式というのが目安となります。後は労力や予算との折り合いになるでしょう。電動にする場合は、コンセントの位置やコードの長さも要チェックです。
刈る方式
芝刈り機の刈る方式には、リール式とロータリー式があります。リール式はドラム状の刃が縦に回転して芝を刈ります。ロータリー式は円盤状の刃が横方向に回転して芝を刈ります。見た目の仕上がりにこだわるのであればリール式をおすすめします。
芝刈り機の幅
芝生の中にあまり障害物のないレイアウトなら、できるだけ幅の広いものを選んでおくといいでしょう。一般家庭で使う芝刈り機は幅200~300ミリのものが多いです。私も今は幅300ミリの芝刈り機を使っていますが、以前使っていた200ミリの芝刈り機と比べると作業性の高さは比べ物になりません。
右が幅300ミリの芝刈り機、左が幅200ミリの芝刈り機、それぞれ一往復してみたのですが、これくらい違いが出てきます。
メンテナンス性
リール式の場合は「ラッピング機能(刃の研磨)」がついているものがおすすめです。ラッピング機能があれば、刃に研磨剤をつけて逆回転させて研磨することができます。刃の切れが悪くなっても、刃の交換をすることなく切れ味を復活させることができます。