芝生の肥料の選び方や使い方を知ろう
成長を促すためにシーズン中は肥料が必須です
芝生の発芽が始まる3月頃から11月頃までは、肥料を与えてやる必要があります。ここでは、肥料の成分や肥料のやり方、選び方、注意点などについて解説していきます。肥料無しでは密な芝生を育てることはできせんので、用量用法を守って与えてやりましょう。
肥料の効果は一目瞭然
芝生の生育は肥料の有無で全く違う
写真は2008年に施肥による成育の違いをテストした時の様子です。春の立ち上がり時期に、あえて施肥をしないエリアを作った結果このようになりました。緑が濃い部分が施肥をした場所です。明らかに生育状況が違うのが分かると思います。このテストからも分かるように、肥料を与えることは芝生の成長に最も影響を与えます。他の作業ではここまで違いが出ることは無いでしょう。肥料を適切に与えることによって、絨毯のような美しい芝生へと成長してくれるでしょう。
芝生の肥料の選び方
粒状肥料(固形肥料)をベースにする
肥料は粒状肥料をベースにしてください。芝生用の液体肥料もありますが、栄養素の成分量が少ないため十分な栄養が与えられないことがあります。粒状肥料(固形肥料)は栄養素の含有量が多く、適度にしっかりまくように設計されていますから、肥料のベースとして最適です。粒状肥料で施肥のベースを構築し、もう少し成長させたい場合などに液体肥料で補うようにしてください。
※液体肥料のみでも育成は可能ですが、散布頻度を増やしてやる必要があります。
初めての肥料選び
初めて肥料を選ぶ場合は、芝生専用のものがお勧めです。芝生用肥料には、必ず散布時期や散布量の目安が解説してありますから、使い方に迷うことがありません。
また、芝生専用肥料は芝生に適した溶け方になるよう調整してありますから、効果も得られやすいのです。一般的な化成肥料ですと、溶け方が遅くて肥効が実感しにくいものもあります。
粒のサイズにも注意が必要で、芝生が生長して密度が上がると粒が大きいものは隙間に入らず葉にのったままになります。その点、芝生用肥料の場合は小さな粒になっていますから、隙間に落ちやすいというメリットがあります。
肥料で最も重要なのはチッソ・リン酸・カリの主要三要素ですから、最低限これらがしっかり入っているものであれば大丈夫です。10-10-10や8-8-8などの表示は、チッソ・リン酸・カリがそれぞれ10%ずつ、8%ずつ入っていることを示しています。芝生用の化成肥料ですと、このぐらいの数字が一般的です。
ただし、芝生が要求する栄養素はチッソ・リン酸・カリだけではありませんので、その他の中量要素や微量要素も供給できるように肥料設計を検討してください。(必要な栄養素については下部の表をご参照ください)
化成肥料と有機肥料、どっちを使うべき?
肥料には化成肥料と有機肥料があります。どちらが優れているかというのはナンセンスで、双方に特徴がありデメリットもあります。迷った場合は、とりあえず手軽な化成肥料からスタートしてください。
芝生用の化成肥料は比較的即効性のものが多いですから、効果も分かりやすいでしょう。臭いもあまり無く扱いやすいのは確かですが、大半がチッソ・リン酸・カリの主要三要素しか入っていませんから、その他の栄養素を補給することはできません。
よく化成肥料が批判の対象になるのは、チッソ・リン酸・カリ以外の必要な栄養素が投入できないために生理障害が発生する可能性があることと、地力の基になる有機物を供給できずいわゆる「地やせ」が発生しやすいためです。化成肥料が直接なにか悪さをするわけではありませんから、化成肥料=悪 という判断はしない方がいいでしょう。
芝生を植えてから何年も化成肥料しか入れていない場合、栄養バランスの崩れによって生理障害や成育不良が発生することもあります。化成肥料をメインとする場合は、その他の栄養素をどういう形で入れるかを検討してください。
有機肥料は豊富な種類の栄養素を供給でき、なおかつ地力の向上につながることもありますから、バランス的な面では優れていると言えます。
最も大きなデメリットは臭いがあるものが多いことでしょう。散布後数日間は臭いが漂うため、住宅密集地では使いづらい面があるかもしれません。
また、即効性ではないため効果が緩やかでやや分かりにくいこともあります。肥効が緩やかという反面、長続きするのですが、散布量が多すぎた場合には効きすぎの状態が長く続くため、やりすぎには注意が必要です。
化成肥料にしろ有機肥料にしろ、芝生専用のものを選んで説明書通りに使用すれば困ることはないでしょう。
管理人が使っているのはどんな肥料?
管理人宅でベースとなる肥料として使っているのは、万緑-NHTとエンザアミンの組み合わせです。この二つを組み合わせることによって、チッソ・リン酸・カリの供給だけでなく様々な効果を狙っています。
・主要三要素のチッソ・リン酸・カリの供給
・サッチ分解促進(万緑-NHTの微生物+エンザアミンの酵素)
・ケイ酸とカルシウムで対病性向上
・ケイ酸・苦土・鉄による光合成促進
・万緑-NHTのトレハロース(糖)で耐候性向上
・微生物による病原菌抑制
・発色向上(鉄、苦土)
・エンザアミンの酵素による成長促進
・チッソをアミノ酸で与えることによる吸収後の負担軽減
化成肥料に加えて、サッチ分解剤やカルシウム肥料、微量葉素肥料 ケイ酸肥料など様々なものをまいたのと同様の効果を期待して万緑-NHTとエンザアミンをベースの肥料としています。これにスーパーグリーンフードやアクアセーフGを併用することで、その他の栄養素を補ったり土壌改良や病害抑制、サッチ分解の効果を高める使い方をしています。
肥料のまき方
手で散布する
粒状肥料の場合は、手でパラパラと均等に散布します。成人男性の手でひとつかみが約40~50グラムほどですから、それを基準に散布します。量りで自分のひとつかみの量を確認しておくのもいいですね。粒状肥料は粒の散らばり具合、液肥は散布しながら歩くスピードを覚えておけば、ほぼ用量を守って散布できます。散布ムラが激しくなると、芝生の色にもムラができますので、なるべく均等になるように散布するのがポイントです。
肥料散布ツールを使う
手で散布するのはムラになりやすく、また広い面積の場合は時間がかかってしまいます。肥料散布器を使うとより均一に散布することができ、散布時間も短縮できます。左の写真はハンディスプレッダーと言われる肥料散布機で、ハンドルを回すと肥料が広範囲に飛ぶようになっています。ハンドルを回しながら歩くだけで簡単に肥料散布ができますが、数メートルの幅で飛びますので、ある程度の面積がある庭でないと性能をもてあますでしょう。粒の小さい肥料では不具合が出るものもありますので、使用する肥料によっては相性が悪い場合があります。
現在、管理人が最も重宝している肥料散布ツールはこちらの粒剤スプレイヤーです。肥料を充填して下に向けて歩くだけで散布できるという優れもの。管理人宅のように、スプレッダーでは飛びすぎて困るような場合に適しています。
■粒剤スプレイヤーで肥料を散布する様子
液体肥料はジョウロで散布する
液肥の場合はジョウロで散布します。使用する肥料や資材を規定倍率に薄めて、平米あたりの規定量にしたがって散布します。
あらかじめ水で散布速度の練習をしておくといいでしょう。例えば希釈液を平米1リットル散布する場合は、10平の面積を対象にして、水10リットルがどれぐらいの速さで歩くとちょうど無くなるのか確認しておくと、本番でまきすぎや不足といったことを防げます。
液体肥料を混合散布する場合は、原液や濃い希釈液を混ぜて問題が発生しないように注意が必要です。
肥料散布の注意点・散布頻度や時期など
散布ムラには気をつけよう
肥料の散布ムラによって芝生の色や成長に差が発生している様子。散布ムラを防ぐためには散布器具を使用することをお勧めします。手で均等に散布するのはかなり難しい作業が要求されます。
散布ムラによって生育の差が激しくなると、よく伸びる部分だけ軸刈りになってしまう可能性もあります。
また、水不足は肥料ムラの影響を助長しますので、雨の少ない時期に肥料を散布した場合は、その後の散水にも気を付けましょう。
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肥料を散布する時期や頻度は肥料によって異なる
散布する時期や頻度、量は、肥料によって異なりますので、必ず説明書をよく読んで把握してください。粒状肥料の場合は、だいたい月1回ペースぐらいのものが多いです。
おおよその目安としては、チッソ換算で月2~3g/m2になります。10-10-10の化成肥料なら月20~30g/m2程度になります。芝生用の肥料であれば必ず散布時期と散布量が説明してありますので、最初はそれに従って散布してください。
散布量は多すぎても少なすぎてもダメ
肥料をしっかり与えるほど成長が促されるのは事実ですが、やりすぎても肥料焼けや根傷みなどの問題が生じることがあります。特に梅雨時期や台風シーズンなどのように成長が旺盛な時期でなおかつ大量の雨が降る場合には、雨で芝刈りができないのに成長が早くて葉が伸びすぎてしまうケースがあります。
肥料が少なすぎると当然成長がおぼつかなくなり、極端な場合は年々衰退してゆくということになりかねません。
まずは説明書通りの散布から始めて、その後は成長の様子を見ながら目指す仕上がりに近くなるよう調整してください。
気温の高い時期は焼けに注意
日差しが強く気温の高い時期になると、葉焼けのリスクが高くなります。葉焼けとは、葉に肥料などの資材が付着した状態で高温や直射日光にさらされることによって枯れが生じることです。
気温が高い時期の散布は、朝か夕方の涼しい時間帯に行い、散布後は必ずたっぷり散水して葉についた資材を洗い流しておきましょう。
与えた栄養を芝生が吸わなければ意味が無い
散布した肥料の多くは土壌と結びついて保持され、それが水と一緒に根から吸収されます。そのため施肥後は適度に散水をしてやる必要があります。施肥後に雨が降らない場合には特に注意してください。
またリン酸やカルシウム、その他ミネラルなどのように、土壌との結びつきが強くて植物に吸収されにくいものもあります。こういった栄養素を吸収するために植物は根から根酸という物質を放出して溶かし出す機能を持っています。それをさらに促進させるのが有機酸を含有する資材です。有機酸酵素EXやアルムグリーン、キトサン溶液スーパーグリーンなどが有機酸を含有している資材ですが、こういった資材を活用することにより、さらに肥料吸収を高めてやることができます。
たくさん与えたい場合は頻度で調整する
成長を促したいので少し多めに肥料を与えたい。そういう場合には、一度に多量に入れるのではなく、一度の散布量は増やさずに頻度を上げることで調整してください。一度の多量の肥料を入れると根が傷みやすくなり、傷んだ根は肥料吸収が衰えますから逆効果になることがあります。
一か月に平米あたり20g入れるところを30~40gに増やす場合は、15g~20gを2週間の間隔で2回入れると根傷みが発生しにくくなります。
また、粒状肥料を入れた後に液体肥料で補ってやる方法もあります。(液体肥料は一回あたりの栄養素が少ないため調整に使いやすい。ただしメインの肥料としては弱い)
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肥料の成分
多量要素(肥料の主成分・三大要素)
芝生が必要とする肥料に欠かせない三要素が「窒素・リン酸・カリウム」です。肥料の成分表示では「N・P・K」と書かれることも多く、配合される割合は「8-8-8」や「10-10-10」などと数字のみで表示されます。「10-10-10」なら窒素・リン酸・カリがそれぞれ10%ずつ含まれているということになります。「窒素・リン酸・カリウム」は、植物の生長に要求される量が多量なことから多量要素として分類されます。
成分 | 働き |
---|---|
窒素(N) |
葉や茎の成長を促進します。窒素が適度に与えられていると葉色が良くなり、ぐんぐん生長します。やりすぎると病虫害に弱い軟弱な芝生になってしまいます。葉肥(はごえ)とも言われます。 植物は光合成によって 窒素→アミノ酸→たんぱく質・糖 に生理移行させて成長します。天候不良や日陰などの影響で光合成が不足すると、途中段階のアミノ酸が体内に蓄積し、それを好む害虫や病原菌に侵されるリスクが高まります。 |
リン酸(P) |
根の発育や芽の分けつなど、植物の生長に大きく影響します。生長初期段階では特に重要な成分になります。花肥(はなごえ)や実肥(みごえ)とも言われます。 春の立ち上げ時期には少し多めに入れてもいいですが、旺盛に成長する時期になってからあまり与えすぎると秋の出穂が多くなることがあります。このあたりは、窒素とリン酸の比率によっても変わると思われますので、穂の多さが気になる場合は肥料のやり方を調整してください。管理人宅では硫安(窒素の単肥)をしっかり与えることで穂が少なくなっています。 ※穂の数は、肥料だけでなく環境も影響するようですので、肥料比率だけで解決できるとは限りません。(参照:芝生に穂が生えてきた) |
カリウム(K) |
根の生長を促します。また、根や茎や葉を丈夫にし、耐病性を高める役割もあります。カリ・加里と表記されることもあります。根肥(ねごえ)とも言われます。 管理人宅では、ラージパッチの治癒に即効性のカリを含んだ肥料を与えて対処することがあります。カリウムの中で最も吸収が早いとされる硝酸カリを含有するスーパー・ポリ・スピリットを定期散布することで生理移行を促進し、体内の余分なアミノ酸を減らして病原菌のエサを減らす方法になります。 |
中量要素
肥料の三大要素以外にも重要な成分「カルシウム・マグネシウム・硫黄」があります。これらも多量要素として分類されることが多いのですが、多量要素ほどは必要ないという意味から「中量要素」として分類されることもあります。(写真はマグネシウムの苦土が混入されている例)
成分 | 働き |
---|---|
カルシウム |
細胞壁を強化し、しっかりした植物体になります。窒素をひかえめにしてカルシウムを多く与えると葉の伸びを抑える効果があります(徒長防止)。 |
マグネシウム |
葉色を良くし、光合成の能力を高める働きがあります。 |
硫黄 |
タンパク質の合成に必要な要素。葉の色がよくなり、光合成を促進してくれます。 |
微量要素
必要量はごく微量でも、植物にとって重要である要素に「マンガン・ほう素・鉄・亜鉛・銅・モリブデン・塩素・ニッケル」があります。微量要素はたんぱく質合成に欠かせない酵素を作るのに必須の元素も多いですから、これらが欠乏すると生理障害が起き、病気のような症状や芝生の元気がなくなるなどの症状が現れます。手入れをしているのに芝生が年々元気が無くなるような場合は、微量要素不足も原因の一つとして考えられます。
管理人宅で使用している資材で微量要素肥料としてお勧めできるのは、スーパーグリーンフードです。土壌改良や植物の活性向上、サッチ分解などの効果があり、微量要素もしっかり含んでいます。芝生を元気にするだけでなく、病害や踏圧で傷んだ場所の修復にも活用しています。
また、土壌浸透剤のアクアセーフGにも微量要素が含まれていますから、葉面散布で与えたい場合はこちらがお勧めです。土壌浸透剤には、土壌の浸透性を高める効果だけでなく、肥料などの吸収を高める効果もありますから、他の液体資材と混合散布することで相乗効果も期待できます。(液体資材によっては混合散布しない方が良いものもありますから、製品の説明書をよく読んでから判断してください)