芝生に堆積するサッチとその対策について
サッチって何だろう?
芝生の刈り草や冬枯れした葉、古い根などが土壌の表装や浅い部分に堆積して層を成したものを「サッチ」と言います。芝生を張った最初の年はほとんどありませんが、2年目以降は冬枯れした葉やこぼれた刈り草がサッチとして堆積し始めます。
芝生の葉はリグニンやセルロースなどの繊維質が非常に多く、他の植物と比べて非常に分解されにくいのが特徴です。また、分解されやすい地中ではなく表層に堆積しますので、サッチとして層を形成しやすいのです。サッチが堆積すると様々なトラブルの原因になりますので、定期的にサッチを取り除く作業(サッチング)をする必要があります。
サッチの性質と問題点
堆積したサッチは土壌の通気性と水はけを悪化させます。通気性が衰えると、土壌や表層の微生物の働きが弱まり、さらにサッチの分解を遅らせる悪循環に陥ります。微生物の多様性も失われ、特定の病原菌が繁殖しやすい環境にもなります。
また、乾燥したサッチは水をはじく性質がありますから、散水しても土壌に水が浸透しにくい状況になります。しかし、大量の雨が降ると今度はサッチが水を含んで保水し、病原菌が増加する要因になったり、藻や苔が生えたりと様々なトラブルの原因となります。乾燥している時は水をはじくのですが、大雨などで一旦吸湿すると保水するというやっかいな存在なのです。
完璧に取り除くのは難しいですが、できるだけサッチの少ない環境を維持することが大切です。(写真はサッチに発生した藻)
サッチ取りの方法・サッチング
熊手などでかき出す
サッチ取りの基本は、熊手やレーキなどでかき出す方法です。サッチを除去する時には金属製の熊手が便利です。サッチをかき出した後、芝生がスカスカしたり、ほふく茎がむき出しになるようでしたら、薄く目土を入れた方がいいでしょう。
きれいな芝生ほど密度が高いものですが、密度が上がると熊手が入りづらく、手作業によるサッチングが困難になることがあります。そういった場合は、サッチングマシンを使用したり、サッチ分解剤を使用するといいでしょう。
サッチングマシンを使う
サッチ取りは芝生の手入れの中でも比較的労力を必要とする作業になります。特に密度が上がった芝生では熊手によるかき出しが困難になることもあります。サッチングの労力削減にはサッチングマシンが役立ちます。一般家庭で使いやすいサッチングマシンには、キンボシの電動ローンコームや、リョービの電動芝刈り機に取り付けるオプション機能のサッチング刃・根切り刃などがあります。(写真はリョービの芝刈り機に根切り刃を装着している様子)
根切り刃が作動する様子。かき出される様子が分かりやすいように、集草ボックスをわざと外しています。
根切り刃が回転する様子です。
更新作業でサッチ分解促進
枯れた葉は土の中の方が効率よく分解されますので、サッチの上から目土をかぶせてやることで分解を促進することができます。また、エアレーションで通気性を確保すると菌の活動が活発になり分解が進みやすくなります。
とはいえ、あらかじめサッチやサッチの元を取り除いておくことに越したことはありません。サッチ取りや冬枯れした芝の低刈り、エアレーションをした後に目土を入れることで高い効果を得られるでしょう。目土入れについては、グランドレベルが上がるなどのデメリットもありますので、庭の事情に合わせて行ってください。(写真は熊手によるサッチングの様子。この後に低刈りやエアレーション、目土をすると相乗効果が期待できます)
サッチ分解剤を使う
管理人が使用しているのは万緑-NHTとエンザアミンの組み合わせ
サッチの自然分解は非常に時間がかかりますが、サッチ分解剤(サッチ分解促進剤)を使用することで分解を早めてやることができます。写真は私が愛用しているサッチ分解剤の万緑-NHT(ばんりょく)とエンザアミンです。この2つの資材を組み合わせますと、施肥と同時にサッチ分解、耐病性向上、耐候性向上、健全性向上など、様々な効果を発揮してくれます。
万緑-NHT(ばんりょく)には、好熱菌、バチルス菌、放線菌が含まれており、これらの菌が放出する酵素がサッチの分解を早める働きをします。一般的には、真夏は暑すぎてて菌の活性が衰えると言われていますが、好熱菌は字の通り熱を好みますから、真夏でも活動が衰える心配がありません。また、トレハロースが含有されていますから、それをエサにして土壌の土着菌も増殖しサッチ分解促進作用を高めます。
エンザアミンには酵素が含まれており、芝生が生育している間は合成酵素として成育促進の役割をします。刈り取られて枯葉になると、分解酵素として内側から分解を促進する作用があります。万緑-NHTは外から分解、エンザアミンは内側から分解を促進します。
土壌改良剤のスーパーグリーンフードにもサッチ分解効果がある
万緑-NHTやエンザアミンと共に愛用しているスーパーグリーンフードもサッチ分解を促進する働きがあります。この資材にはバチルス菌や放線菌が豊富に含まれており、これらの菌がサッチ分解を促進してくれます。さらに、資材そのものが微生物の住みかを提供するため、万緑-NHTなど他の資材との併用によって相乗効果が期待できます。元々は病原菌の繁殖抑制を目的として導入した資材ですが、万緑-NHTやエンザアミンと平行して定期散布する我が家の定番の資材となっています。これらの三種類を組み合わせることで、芝生が要求する14種類の栄養素を網羅でき、なおかつサッチ分解をはじめとする様々な役割も期待できるため、本当に重宝しています。
冬枯れした芝生を取り除く
萌芽前の芝焼きもサッチを減らすのに有効な手段です。芝焼きはサッチの除去だけでなく、害虫駆除や病気予防、発芽促進の役割もあります。乾いた枯れ芝はかなりの勢いで燃え広がることもありますので、火の取扱いには十分ご注意ください。(写真は岡山後楽園の芝焼きの様子)
冬枯れした芝生はやがてサッチの元になります。萌芽前に低刈りしておけば、サッチの元を減らすことができます。更新作業と一緒に行えば、相乗効果が期待できます。住宅事情で芝焼きができない場合に有効な手段です。(参照:2月の日本芝(高麗系)の手入れ)