ラージパッチの発生する時期と症状
ラージパッチが発生しやすい時期
管理人宅のような暖地(瀬戸内地方)では、4月から症状が現れ始め、5月には顕著なパッチが確認できるようになります。寒地ではもう少し時期が後ろにずれるでしょう。
最高気温が20~25℃ぐらいで発症が激しくなり、雨や多湿、無風の日が続くとさらに症状が重くなります。春が天候不良気味の場合には発生リスクが高くなりますので、警戒が必要です。
季節の移り変わりとともに気温が上昇し、最高気温が30℃付近になってくると症状が軽減されます。軽症の場合は自然治癒しますが、重症の場合はパッチの跡がしばらく残ることがあります。
ラージパッチの症状
数十センチから数メートル、場合によっては10メートル以上の巨大なパッチ状に枯れや変色が発生します。円形ではなく不定形なパッチになることが多く、象の足跡病とは特徴が異なります。
パッチ周辺部は特に症状が顕著になり、雨や湿度の高い日にはパッチ周辺部がオレンジ色や赤色に変色する特徴があります。
数メートルの大きさの典型的なラージパッチ。巨大なものでは10メートル以上になることも。
管理人宅で発生した比較的小さなラージパッチ。数十センチから1メートルぐらいのサイズです。パッチ周辺部が変色して枯れ、パッチ内部は密度低下などの症状が見られます。
ラージパッチは外へ外へと大きくなる性質があり、また一度発生した場所には毎年症状が現れるという特徴があります。
この写真は上の写真の翌年の様子ですが、パッチが大きくなっているのが確認できます。このように、パッチが外へ外へと拡大していくのがラージパッチの特徴です。
殺菌剤によるラージパッチ対策
ラージパッチに適用がある殺菌剤で治癒や予防をする
ラージパッチに限らず、芝生の病害抑制や予防で最も効果が高いのは殺菌剤の散布です。ラージパッチに適用がある殺菌剤を散布すれば、根源となる病原菌が殺菌され、症状が治まる、もしくは予防できます。ラージパッチに適用がある殺菌剤には次のようなものがあります。
これらの殺菌剤のうちいずれかを説明書通りに散布して抑制してください。なお、殺菌剤の散布には展着剤(芝の葉は水をはじく性質があるためそれを防ぐ)を必ず混用してください。展着剤未使用で散布しますと、芝生の葉が薬剤をはじいてしまい効果が半減してしまいます。
後述の無農薬によるラージパッチ対策も併用すると、殺菌剤の効果がさらに高まります。
バリダシン液剤によるラージパッチ治癒例
バリダシン液剤5は、微生物由来の薬剤が主成分となているため、薬品に抵抗がある方でも比較的使いやすい殺菌剤ではないかと思います。ただし、農薬ですから取り扱いは説明書に従って適切に行なってください。
余談ですが、○○マイシン、○○○シン、という名称の薬は微生物由来の成分だそうです(人間に使うものも)。
2010年5月に発生したラージパッチに対し、バリダシン液剤5を用法通りに散布。
バリダシン液剤散布から3週間後のラージパッチの様子。かなりパッチがぼやけてきているのが分かります。
殺菌剤散布から1ヶ月後のラージパッチの様子。密度のムラがあるものの、パッチはほとんど確認できなくなりました。
殺菌剤散布から2ヶ月が経過し、完全に治癒していることが確認できます。
心理的には殺菌剤を散布したら2~3週間ぐらいで修復してほしいところだと思いますが、症状が悪化してからの殺菌剤の施用は、治癒に2ヶ月ぐらいはかかる前提で考えておいた方がいいでしょう。スーパーグリーンフードなどの再生を促す資材を併用することによって、もう少し早く治癒が確認できる可能性もあります。
殺菌剤が最も効果を発揮するのは発病前(症状が出る前)ですので、殺菌剤の使用に抵抗が無い方は早め早めの散布で抑制しておくと、発病しないきれいな芝生を楽しむことができるでしょう。
同じ殺菌剤を連用すると薬が効かない「耐性菌」が生じることがありますので、積極的に殺菌剤を取り入れる場合はローテーション(2~3種類の殺菌剤を順番に散布)もしっかり検討してください。
関連記事:芝生の殺菌剤について
殺菌剤を使わずにラージパッチを抑制する
ラージパッチが発生しにくい条件を整える
管理人の経験からしますと、ラージパッチは無農薬でも抑制や治癒が可能であると判断しています。ただし、何か一つだけやったら抑制できるとか治るようなことはありませんので、複数の方策を併用してラージパッチが発生しにくい環境を整えてやることが重要です。
土壌のPHを調整する
過去に様々なことを試してみた結果、土壌のPHを6.5以下にしておくことがラージパッチの抑制には有効であることが分かりました。PHが6.5を超えて7(中性)ぐらいになってくるとラージパッチの発生リスクは急上昇します。
※PHは7が中性で、それより数字が小さくなると酸性、大きくなるとアルカリ性になります。芝生は6付近の弱酸性が適しているようです。
土壌のPHは病害リスクへの影響が多いと推測されますので、定期的に測定し6.5を超えないようにコントロールすることが重要です。
農作物では土壌PH調整に石灰を入れることがありますが、芝生の場合はよほど低PH(酸性)でない限りは入れない方が良いでしょう。
PHを下げるには、生理的酸性肥料(硫安や硫酸カリなど)を使う方法、PH下降剤(硫黄や希硫酸、リン酸塩、酢酸など)を使う方法などがあります。また、肥料をやりすぎることで土壌がメタボリック状態(塩類濃度上昇)になってPHが上がることもありますが、その場合は塩類除去する資材を使用してPHを下げます。
土壌の微生物を豊かにする
土壌には多種多様な微生物が存在しており、病原菌もその微生物の仲間です。微生物は生き残りをかけてお互いがけん制しあう関係にありますから、多種多様な微生物が豊富に存在しているほど、特定の種類の微生物だけが増殖することができなくなります。
土壌の通気性が衰えて嫌気状態(土壌の酸素が少ない状態)になると、芝生にとって悪い菌(病原菌だけでなく、根を傷めるガスを発する菌など)が増殖しやすくなり、体が弱ったり病気に罹患しやすくなります。このため、定期的なエアレーションによって土壌の通気性を確保することが重要です。
また、土壌の水が多すぎても嫌気状態になりますから、芝生への散水を工夫して水のやりすぎで嫌気状態が続かないようにしましょう。
サッチ分解剤や土壌改良剤などの微生物資材や、微生物を増殖させる資材を定期的に投入することでも土壌微生物を増殖させることができます。
管理人も愛用しているスーパーグリーンフードはゴルフ場でのラージパッチからの回復にも定評があります。
カリを与えて生理移行を促進する
芝生などの植物は、光合成によってチッソを生理移行させてたんぱく質や糖を生成し、体を成長させたり生存エネルギーを作ります。日照不足などの要因で生理移行が滞りますと途中段階の遊離アミノ酸が増加し、それを好む病原菌や害虫の被害に遭いやすくなります。
それを防ぐためには、栄養素のカリを与えることが有効です。カリを吸収した植物は生理移行が促進されますので、病原菌や害虫が好む物質が体内に蓄積されにくくなります。カリの中でも硝酸カリは最も吸収が早く即効性があります。管理人宅では、硝酸カリを含むスーパー・ポリ・スピリットを週1回程度のペースで散布し、ラージパッチの予防や収束に活用しています。
ケイ酸やカルシウムで芝生の体を強くする
芝生はイネ科の植物であり、ケイ酸を多量に要求する特性があります。ケイ酸は葉の表層(クチクラ層)を強化しますから、病原菌の侵入を抑制する働きがあります。また、カルシウムは細胞壁を強くして、芝生の体そのものを強化する働きがあります。ケイ酸やカルシウムを適度に与えることで芝生の耐病性を高めておくと、病気のリスクを低減することができます。
関連ページ:芝生の肥料について
光合成を促進して病原菌が好む物質を蓄積させない
芝生は光合成をすることによって、体内で生理移行を促進したんぱく質を合成して体を作ります(成長)。天候不良や水不足、栄養不足や偏りなどによって光合成が滞ると、たんぱく質を合成する途中段階の物質が体内に蓄積され、それを好む病原菌に寄生されやすくなります。天候不良で病気にかかりやすくなる大きな要因と言えます。
光合成を促進するには、まず日照がもっとも重要ですが、天候は人間の都合ではどうしようもありませんから、人の手で改善できることだけやりましょう。できるだけ樹木の選定をして陰を少なくする、日差しをさえぎるものを置かないなど、気象条件以外でできることを検討してください。
上の記事で紹介したケイ酸は、葉の表皮を強くするだけでなく、葉の表面にケイ化細胞を増やす作用があります。これによって日光の吸収効率が上がり、光合成が促進されます。
また、体内の生理移行には栄養素の「カリ」が深く関わっており、カリを吸収させることによって生理移行を促進することができます。最も吸収が早いとされる硝酸カリ(スーパー・ポリ・スピリット)がお勧めです。
その他の栄養素としては、光合成に欠かすことができない鉄分や苦土、その他のミネラルも重要です。栄養バランスに気をつけて、光合成が滞らないように配慮しておきましょう。
関連ページ:芝生の肥料について
ミミズとラージパッチ
ミミズの多発はラージパッチのリスクを高めるかもしれない
管理人宅でよく見られた光景がこちら。多発したミミズの糞塚とラージパッチです。ミミズとラージパッチの科学的な検証はありませんが、ミミズの塚が多いとラージパッチが発生しやすい傾向にあることは感じていました。
ラージパッチはPHが高め(中性~アルカリ寄り)で激発しやすくなりますが、ミミズも同様の環境を好むようですから、ミミズがたくさんいるということは、ラージパッチが発生しやすいPHになっていると言えるのかもしれません。
ラージパッチの初期症状と思われる部分に発生したミミズの糞塚。
これは憶測でしかありませんが、ミミズの体表にラージパッチの菌が付着して動き回ることで病気が広がる可能性もなきにしもあらず。なんにせよ、ミミズが多発する環境ではラージパッチのリスクが高くなると言えそうです。
関連記事:芝生のミミズ対策
恐れ入ります。大分県の南部佐伯市に居住しています。我が家の芝生がラージパッチの症状(後でわかりました)で対策をせず、秋から冬となり、今は枯れた状態です。
最近春めいてきましたので、施工業者に対策を伺いましたが、薬剤等の紹介はしていただきました。今後の順番として、このまま様子を見て、芝が青くなって、薬剤を散布すれば良いのか、散布時期をお聞かせください。
芝生が青くなる頃にはラージパッチの症状が薄っすら出てきますので、
すでに殺菌剤をお持ちであればすぐにでも予防的散布をされてもいいと思います。
その後様子を見て、緑化とともにパッチが現れくるようでしたら再度散布してください。
パッチが現れなくても3~4週間後ぐらいに再度散布しておくとより安心だと思います。
できれば二種類以上の殺菌剤をローテーションすることをお勧めします。
長い事高麗芝、野芝を無農薬維持管理してきましたが遭遇は1回のみです。
それも部分的で2ケ所だけです。
耕す事お忘れた維持管理では致し方ありませんが、ラージパッチに強い芝も有ることを忘れないでください。チバフェアグリーンです。
ミミズはサポニンを含を椿油カス散布で、水に溶けたサポニンがミミズ体のタンパク質が溶解では生きられない、魚毒性があり魚はエラ呼吸するので呼吸麻痺でれやられるので観賞用に池、水槽の魚類と河川に流入に注意が必要です。
芝生に生える雑草は重量のある芝刈り機で土まで刈る、削るで克服、できにくいのはクローバーだけですが手法はあります。
ラージパッチに強い品種のことは聞いているのですが、病気対策のために張り替えるというのは一般家庭ではあまり現実的ではないかなと思います。
サポニンの魚毒性については商品にも記載されていますしマニュアルでも説明していますので、正しく使っていただければ問題ないでしょう。