7月の芝生の手入れ 基本作業と注意点

日本芝(高麗系)の7月の手入れ

7月の姫高麗芝の様子

7月はいよいよ芝生の全盛期に入ります。梅雨が明けると日差しが強くなりますので、水不足に注意しながらこまめに刈り込みをして美しい芝生を楽しんでください。密度もさらに上昇しますが、密度の高いきれいな芝生は病虫害と表裏一体ですので、変色や密度低下などの変化が見られたら早めに対処しておきましょう。


高温期の資材散布の注意事項

7月に入ると最高気温も上がり、30℃を超える日も多くなってきます。気温が高く日差しが強い日は、日中の資材散布は避けてください(粒、粉、液体など全て)。資材散布後に高温の中で強い日差しにさらされますと、葉焼けなどで傷みが発生することがあります。朝なるべく早いうちか夕方涼しくなってから資材散布をしてください。

また、芝生用除草剤は気温が高くなるほど薬害リスクが高くなりますので、夏季の除草剤散布は見送ることをお勧めします。


芝生の雑草対策

コニシキソウやメヒシバなど夏の雑草が生えてきます。芝生が旺盛に成長する時期は、これらの雑草も旺盛に成長しますので、見つけたら早めに抜き取っておきましょう。メヒシバが群生してから抜き取りをすると、芝生がそこだけはげたようになります。1年生雑草は種を落される前に抜き取っておくと、次の世代が生えてこなくなります。

カタバミやカヤツリグサ科の雑草(ヒメクグ、ハマスゲ)など、地下茎でも増えるタイプの雑草が生えてきた場合は除草剤でないと駆除が困難です。ただし、7月に入ると気温が高くなることから除草剤の薬害リスクが高くなります。最高気温が30℃を超える日が多くなってきたら散布は控えてください。秋になって気温が下がってから除草剤で対処しましょう。

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芝刈り

刈り高15~20mmくらいを目安に芝刈りをします。1週間に1度のペースで芝刈りするのが理想です。特に施肥の後はかなりの勢いで伸びますので、梅雨が明けるまでは雨で芝刈りのタイミングを逃さないよう気をつけてください。タイミングを逃したまま雨が続くと芝生が伸びすぎになることがあります。長くなってから一気に刈ると芝生に負担がかかります。伸ばしすぎを繰り返しますと茎が徒長して軸刈りになることがあります。

関連ページ:芝刈りについて

芝生の水やり

梅雨で雨がよく降る場合は散水無しでもかまいませんが、梅雨が明けて晴天続きになったら1~2日おきに水をやります。水やりは少量を頻繁にやるのではなく、たっぷりやって地面にしみ込ませるのがポイントです。水やりを少量で頻繁にすると、芝生が地中の浅い部分から水分を摂取しようとしますので、根が短くなってしまいます。たっぷりやって地中深くまでしみこませ、芝生の根に水分を追わせるようにしてください。

最高気温が30℃を超えるようになると、水不足のサインが出やすくなります。葉が細く丸まって黒ずんできたら水不足のサインですので、そうなる前に水を与えてください。散水不足は光合成不足やストレスを招くため病虫害やその他の障害が発生するリスクが高まります。

関連ページ:芝生の水やり

芝生の施肥

用量の範囲内で肥料を与えます。肥料には、毎月与えるもの、隔月で与えるもの、月に2~3回与えるものなど、さまざまなタイプがあります。説明書をよく読んで、用量を守ってください。粒状肥料を散布したときは、必ず水をたっぷりまいておいてください。水やりをしないと芝生が肥料焼けをする可能性があります。踏まれたりして傷みやすい箇所は、肥料や水をしっかりやって生育を促してやってください。

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芝生の病気

春の病気であるラージパッチは、よほどひどい症状でない限りは気温上昇とともに治まるでしょう(健全性が低下して耐病性の低い芝生になっていた場合は治りにくいことがあります)。6月から発症するカーブラリア葉枯病は、梅雨明け前のまとまった雨で一気に症状が悪化することがあります。無農薬での対処は難しい病気ですから、早めに殺菌剤で対処しておくことをお勧めします。

カーブラリア葉枯病は梅雨が明けるとやや沈静化しますが、気象条件によっては油断できません。多湿で無風、夜露が多い、台風などの影響によるまとまった雨などで症状が悪化することがあります。

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芝生の害虫

芝生のシーズン中は常に何らかの害虫が存在しているものとして警戒しておきましょう。

この時期は芝生の成長が旺盛なので被害が目に付きにくいこともあります(害虫が食べるより成長の方が早い)。ただし、多数の害虫が発生している場合は、密度低下や部分的な枯れが症状として現れます。被害が目立つようならスミチオンなどの殺虫剤で早めに対処してください。あらかじめ食毒性(浸透性)のオルトランなどで予防しておくことも有効です。

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寒地型西洋芝の7月の手入れ

7月のケンタッキーブルーグラスの様子

梅雨が明け本格的な夏を迎えると最低気温も適温を上回る熱帯夜が増えてきます。1日中適温を上回る日が増えることになりますから、寒地型西洋芝にとって最も厳しい季節に入ります。日照が強くなりすぎることによって光合成は次第に低下し、根も短くなり(根上がり)成長が衰えてきます。


芝刈り

無農薬や減農薬での管理を目指す場合は、刈り高を上げることによって芝生の負担を減らし、夏越しのための養分をできるだけ蓄えさせることができます。積極的に農薬を使用する場合は、刈り高はそのままでいくか、気持ち上げるぐらいでいいでしょう。日差しが強すぎて光合成が衰えると成長も鈍化しますので、芝刈りのペースはそれに合わせて調整してください。

体力が低下する時期の芝刈りは芝生にとって負担になりますから、必要最低限に抑えることがポイントになります。


水やり

梅雨が明けたら毎日散水が基本です。日が昇りきって暑くなる前に散水はすませてください。日中は蒸れますから散水は控えましょう。夕方の散水は病害を助長することがありますので、仕事の都合でどうにもならない場合を除いて、できるだけ朝の散水をお勧めします。

日中にミストで散水して葉を少しだけ濡らしてやることにより、気化熱によって芝の温度を下げてやる暑さ対策もあります(シリンジング)。


肥料

粒状肥料(固形肥料)の多くは、真夏の西洋芝への施肥は休みになっているでしょう。もし説明書に散布するよう記載があれば散布しても構いません。日中の気温が上がりすぎると光合成ができなくなりますから、肥料(特にチッソ)を吸わせても生理移行がうまくいかない状態になります。芝生の体力も奪われますし、病虫害の発生リスクも高くなります。肥料を与える場合は、液肥で少しずつ与えるようにしてください。

アミノ酸、鉄、苦土、ケイ酸、カルシウム、カリ、ミネラル(微量葉素)が入った液体肥料をこまめに与えることで、芝生の体力維持が期待できます。

この時期に成長が衰えるのは自然現象ですから、無理に肥料を与えて生育を促そうとしても逆効果になってしまいます。


病気

光合成が衰える夏は、体内に蓄積した栄養を生きるエネルギーにするため芝生の体力が低下し、病害リスクが高くなります。雨天が続く状況で発病すると対処が難しくなる場合がありますので、症状が深刻になる前に予防資材や殺菌剤で抑制しておきましょう。

■発生の可能性がある病害
いもち病、さび病、サマーパッチ、ダラースポット病、立ち枯れ病、ドライスポット(*)、ピシウム病、フェアリーリング病、ブラウンパッチ(葉腐病)、ヘルミントスポリウム葉枯病、ほこりかび病、炭疽病、細菌病、赤焼病

*ドライスポットは砂をメインにした床土で発生しやすい症状です


害虫

11月ごろまでは常に何らかの害虫が存在している可能性があることを前提に対処してください。発生数が多い場合は被害が大きくなりやすく、芝生の再生も阻害されますので、早めに対処しておきましょう。部分的に枯れる、密度が低下する、地上部分がポロポロ取れるなど、害虫の食害と思われる症状が発生したらスミチオンやダイアジノンなどを散布して駆除しておきましょう。予防的な薬剤散布をする場合は食毒性のオルトランなどを使用します。食毒性の殺虫剤は、薬剤が芝生に浸透することによってそれを食べた害虫が殺虫されます。食毒性の殺虫剤は薬が触れて殺虫するものではありませんので、薬剤の特徴を理解して使用してください。

芝生の成長が衰える夏場は、食害が発生すると再生できずに裸地化することもあります。裸地化した場所は雑草が生えやすくなりますし、直射日光で地温が上がって周辺の芝まで弱る可能性があります。できるだけ夏場の食害が発生しないよう注意してください。


夏越し対策

1日中適温を上回る気温の日が増え、いよいよ夏越しが始まります。条件が悪い状態が続くほど体内に蓄積した栄養を生存エネルギーに転換して消耗しますから、病虫害などのダメージはできるだけ発生しないように対処してください。根からの栄養吸収が弱まるため、液体肥料による葉面散布でこまめに栄養を与えてください。いかに体力低下を最低限に抑えるかが夏越しのポイントになります。


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