日本芝(高麗系)の3月の手入れ
芝生の萌芽が始まる3月
3月になると高麗芝の軸(茎)が起き上がり新芽が出始めます。2月に更新作業をしていない場合は、早いうちに行っておくと良いでしょう。更新作業の詳細については、2月のお手入れをご参照ください。
更新作業の一つに目土入れがありますが、目土は芝の生育を促進する効果がある半面、目土入れを繰り返すとグランドレベルがどんどん上昇するというデメリットもあります。広島東洋カープの本拠地であった旧広島市民球場では、長年の目土入れによってグランドが30cmも高くなったという事例がありました。
管理人は、不陸修正(ふろくしゅうせい:デコボコを直すこと)を目的とした目土入れを行い、全体への目土入れは控える方向でやっています。芝生の活性化は、今の土壌を改善することで補っています。
芝焼き
暖地では2月が芝焼きのベストシーズンですが、冬枯れの期間が長い寒冷地では3月でも可能です。
冬枯れした芝が湿っていると燃えにくいですから、しばらく好天が続いた後にやるといいでしょう。風上から火をつけると勢い良く燃えますので気をつけてください。いつでも消火できるように、バケツや散水ホースを準備しておきましょう。
芝焼は必ずしもやる必要はありませんので、自宅周辺の環境や自治体の条例・方針などによって判断してください(煙がかなり出ることがあります)。
関連ページ:芝焼き
春の立ち上げを促進する
春の萌芽促進は更新作業だけでも十分効果がありますが、少しでも早く立ち上げたいのが芝生愛好家の欲求というものでしょう。有機酸を含む資材には根を刺激する効果がありますので、春の根の成長を早めることが期待できます。2月初旬から有機酸を含む資材を散布することで、発育促進の効果が望めるでしょう。
ただし、気候や肥料の与え方、土壌環境によっては、思ったほどの効果が得られない可能性もあります。芝生の成長に最も大きく影響するのは気候です。
管理人が使用している資材で有機酸を含むのは、アルムシリーズ、有機酸酵素EX、キトサン溶液スーパーグリーンなどがあります。
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芝張り・部分張替え
暖地では芝張りや部分的な張替え作業に適した時期に入ります。ただし、3月も寒さがぶり返すことがありますから、長期予報を見ながら気温が高くなるタイミングで計画をしてください。気温ができるだけ上がっていた方が活着(かっちゃく/根付きのこと)がスムーズになります。
張替えをする場合は、必ず古い芝をはがしてから行いましょう。以前ご相談いただいた中で、古い芝の上に土をかぶせて芝張りをした結果、キノコが大繁殖したということがありました。キノコは有機物(枯れた葉や根)をエサとして増殖しますので、土壌中に古い芝があるとキノコの温床になることがあります。
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→後悔しないための芝生の張り方・植え方教えます
→張り替えた芝生はどれくらいで馴染む?
芝生の雑草対策
芝生の芽吹く時期は、雑草にとっても良い季節になります。いろいろな雑草が生え始めますので、気がついたらこまめに抜くようにしましょう。除草剤を使用する場合は、雑草の発芽を抑制する「土壌処理効果」のある物がお勧めです。
■除草剤選びのチェックポイント
除草剤には「茎葉処理」と「土壌処理」の2タイプがあります。「茎葉処理」は茎や葉から薬を吸収させて枯らすタイプで、生えている雑草を駆除します。大きくなってしまった雑草には効きにくいことがありますので、発芽を確認したら早いうちの処理が望ましいです。「土壌処理」は発芽を抑制する効果があります。土壌に浸透した薬剤が数ヶ月に渡って雑草の発芽を抑制しますので、生えてこない環境を維持できます。
イネ科から広葉雑草まで幅広い適用があり、なおかつ茎葉処理も土壌処理も可能なシバキープII粒剤やシバゲンDFなどが便利です。(シバキープシリーズには様々な商品がありますので、しっかり説明書を読んで目的に合ったものを選んでください)
芝刈り
必要ありません。
水やり
基本的に水やりは必要ありませんが、肥料を散布した後は土壌が過乾燥にならないよう注意してください。肥料散布後に土壌が過乾燥になると、溶けだした肥料成分が濃くなりすぎて根が傷むことがあります。
関連記事:芝生の水やり・散水
肥料
芝生のシーズンに入りますので、積極的に肥料を与えて生育を促しましょう。窒素換算で平米2~3g程度(窒素10%の肥料で平米20~30g)程度を月1回与えるのが目安となります。肥料の与え方は製品ごとに異なりますので、説明書に従って散布してください。
肥料の与えすぎは根を傷めたり葉焼けを起こすトラブルの元になります。早く成長させたいからといって、用量の2倍与えたりするようなことはやめましょう。多めに与えたい場合は、一度にやるより複数回に分けてトータルで多めになるようにしてください。
また、栄養バランスも非常に大切です。芝生は十数種類の栄養素を必要としますので、主要三要素のチッソ・リン酸・カリだけでなく、その他の栄養素も投入してあげることが重要です。栄養バランスが崩れると黄化などの様々なトラブルが発生しやすくなります。
関連記事:芝生の肥料について
芝生の病気
春に発生しやすい芝生の病気には、春はげ症状やゾイシアンディクライン(立枯病)があります。これらの病気は萌芽しない部分がパッチ状または不定形に発生しますので、芝生全体が青くなるほど病状が目立つようになります。
すぐに何とかしたいと思うのが愛好家の心理だと思いますが、残念ながらこれらの病気は秋に罹患しますので、春に症状が出てから殺菌剤をまいても急速に回復することは期待できません。
重症でなければ6~7月ごろには自然回復します。施肥によってしっかり栄養を与えながら、スーパーグリーンフードや有機酸酵素EXなどの成長促進作用がある資材を活用して修復を促してください。
症状が重い場合はシーズン中も病害部分が生育不良になることがあります。その場合は、秋に春はげ症やゾイシアンディクライン(立枯病)に対応した殺菌剤を散布して、翌年の発症を抑制しましょう。(芝美人フロアブル、モノクタジンフロアブル、タフシーバなど)
関連記事:芝生の病害対策
芝生の害虫
3月は基本的に害虫被害は発生するリスクは低いですが、コガネムシの幼虫が土の中で越冬して3月下旬頃から食害を始めるケースがあります。根を食い荒らされると芝生が萌芽しない場所ができるため、春はげ症やゾイシアンディクラインと間違える可能性もあります。怪しいと感じたら早めに対処しておきましょう。
芝生のシーズン中は、常になんらかの害虫がいるという前提で警戒が必要です。
関連記事:
→芝生の害虫対策
→芝生が枯れ始めたけど原因がよく分からない
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寒地型西洋芝の3月の手入れ
成長が旺盛になり始める3月
気温の上昇とともに成長の様子が顕著になり、本格的に成長を促す時期に入ります。寒気で発生していた変色や枯れも次第に解消されるでしょう。根雪の地域では手入れ不可となります。
芝刈り
成長の様子を見ながら芝刈りをスタートしてください。全体の長さの2/3ぐらいを刈るのが基本です。寒地型西洋芝の春の成長は急速に旺盛になることがありますので、タイミングを逃して伸ばしすぎにならないよう注意してください。
早めの芝刈りは問題が起きませんが、遅れるほど負担がかかったり軸刈りのリスクが発生することがあります。
水やり
成長が旺盛になると水分も要求されます。適度に雨が降る場合は散水は必要ありませんが、乾燥が続く場合は週2~3回ぐらいのペースで散水してください。
肥料
粒状肥料(固形肥料)を説明書通りに与えます。肥料によって散布時期やタイミングが異なりますので、説明書の通りに散布してください。応用的な使い方ができる方は様子を見ながらタイミングや量を調整してください。
2月に引き続き3月も有機酸の入った発根向上資材を定期散布しておきますと、根の成長が促されて春の立ち上がりを促進することができます。
病気
気温が徐々に上がってくると様々な病原菌が活動を始めます。症状が深刻になる前に予防資材や殺菌剤で抑制しておきましょう。
■発生の可能性がある病害
ダラースポット病、フェアリーリング病、イエローパッチ(擬似葉腐病)、細菌病、フザリウム病、ピシウム病、紅色雪腐病、雪腐小粒菌核病
冬期根雪になる地域では、紅色雪腐病、雪腐小粒菌核病は11月頃、降雪前に殺菌剤で防除しておく必要があります。
害虫
3月は基本的に害虫被害は発生するリスクは低いですが、コガネムシの幼虫が土の中で越冬して3月下旬頃から食害を始めるケースがあります。根を食い荒らされるため芝生が枯れるなどの症状が出ます。怪しいと感じたら早めに対処しておきましょう。
芝生のシーズン中は、常になんらかの害虫がいるという前提で警戒が必要です。
関連記事:
→芝生の害虫対策
→芝生が枯れ始めたけど原因がよく分からない
夏越しの準備
寒地型西洋芝は、夏になると日中の高温と強い日差しによって光合成ができなくなります。光合成ができなくなると、体内に蓄積された養分を逆転させて生存のためのエネルギーに転換します。そのため、春から夏前にかけて栄養をしっかり吸収させ、健全な成長を促して栄養を蓄積させておく必要があります。夏越しの準備は春から始まっていることを意識して手入れをしましょう。
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